「知る幸せ」と書いて「知幸」。知ることや学ぶことの幸せ・喜びを体現するSummer Eyeこと夏目知幸が第7回目に訪れたのは、東京ドームシティにある野球殿堂博物館です。野球ファン垂涎のこちらで、じっくり鑑賞させていただきました。野球ファン以外が楽しめるスポットも紹介します。
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夏目少年がヤクルトスワローズファンになったわけ
野球殿堂博物館に行ってきたぞ!
僕はヤクルトスワローズファンです。理由はシンプルで、小学生の頃べらぼうに強かった。野村克也(以下、野球選手の名前は敬称略)が監督だった1990年から1998年は僕の5歳から13歳に当たる。その間に4回リーグ優勝しているんだから、まあ好きになる。
ただ単に強かっただけではありません! 「ID野球」だとか「野村再生工場」だとかワクワクする言葉と共に語られるスタイルが少年心をくすぐりまくった。選手たちは積極的にテレビバラエティに出演、スポーツ選手とは思えない楽しそうな表情に親近感を覚えた(今となっては普通かもしれない)。ホームである神宮球場に行くと、ファンたちが傘を振って「東京音頭」を歌いながら浮かれて騒いでいる。綺麗な光景だし、楽しいし、強いし、最高だって思った。あの時の気持ちをずっと持ったままなので、ずっとヤクルトファンなのです。
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そもそも、野球を好きになったきっかけ
とはいえ野球を知った最初の最初は、多くの人が同じ経験をしていると思うけど、退屈なスポーツだなと思っていた。おばあちゃんちに行くと親戚たちが酒を飲みながら4チャンつけて巨人戦を見ている。あーだこーだ言いながら楽しそう。
誰はどこ出身だとか、あの選手はいい球投げるとか、ここで代打だろとか。僕は、試合長えよ! アニメ見てえよ! そう思っていた。そう思っていたけど、何度も何度も大人たちの横で退屈に過ごしているうちに、どうやらおじさんは巨人を応援していて、うちの親父はヤクルトを応援しているんだな? ってことが分かってきた。
ばあちゃんちから帰る車でどうしてヤクルトファンなのか聞いてみた。親父の回答はシンプルで「有名な球団を応援したって面白くもなんともないじゃん」というものだった。そういうもんなのか? と思った。それだけ? と聞いた。そしたら色々理由はあった。野村はすごい選手だったけど長嶋の陰に隠れてた、そのリベンジを監督になってしているんだとか。上にも書いたが「ID野球」がどうだとか。チームのムードが明るくていいんだとか。あの外国人選手がオモシレーとか。
へーーーと思った。そのあとから急に試合を見るのが楽しくて仕方なくなった。絶対勝ちそうなチームが、急に負けたりする。いろんなバッターがいて、いろんな投手がいて、いろんな作戦がある。いろんなチームがいろんなところにいてわざわざ移動して試合してるって知っただけで結構びっくりした。パリーグもあるって知って、なんかかなり大掛かりなんだなプロ野球って……って思った。

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「野球っていいよなぁ」という思いが日に日に強くなっていく、今日この頃
高校に入ってバンド始めたり、映画とか他の趣味に走ってあんまり試合見てない時もあったはあったけど、あとまあ普通にヤクルトの低迷が続いた時はちょっと興味失いかけたりはしたけれど、それこそ2006年の『WBC』とかリアルタイムで観て興奮したし、いろんな選手がアメリカ挑戦しているニュースを日々チェックしたり、なんやかんやずーっと野球への情熱の火は消えないまま、興味を失わないまま大人になりまして。
音楽のお仕事がそれなりに軌道に乗ってからは昼過ぎから暇! なんて日がちょいちょいあるから神宮球場にふらっと行ってダラダラ野球見て、小声で文句言って、ああ俺もあの親戚のおじさんと同じになったなあと思いながら、広い広いスタジアムの上に広がる広い広い空を眺めたりしてましてね。で、「野球っていいよなあ」って思いが、本当に冗談ではなく日に日に強くなってんな! って感じのこの頃なのであります。
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野球殿堂博物館は、野球ファンにとっての聖地だった
で、前置き長くなりましたけれど、行ってきました野球殿堂博物館!
なんで今まで行っていなかったのか! なんとなく、です。すいません。あるなあ博物館とは思ってたけどなんとなく行く機会がなくて。そんな人いっぱいいそう。そんな人! 今すぐ行ったほうがいいよ!!!!!!!!!
毎度この連載は博物館を見学してそこで学んだこと知ったことをそれなりに詳しく、展示内容について「行った気になれるくらい」には書くことを自分に課しているのですけど、今回はただ僕が興奮している様子をご覧いただくことになる前半と、後半は野球好きじゃない人もこれは楽しめるんじゃないかなっていう野球の「歴史」についてを紹介して「とにかく行ったらいいよ!!」っていうマイマインドを放出できれば、そう思っています。


さあ野球殿堂博物館入るとまずドーン! とぐるっと現役選手たちから寄贈されたユニフォームやらグローブやらバットの実物が飾られています!! やったー!!! のっけからオタク向けの展示です!! 最高!! 村上宗隆のユニ! 源田のグローブ! 岡本のユニ! 最高!! ここに数時間入り浸れちゃう。危険!!
そこから一つ部屋を進むと、今東京ドームがある場所にかつて建っていた後楽園球場で実際に使われていたダグアウトのベンチが置かれています! やべえ! その後ろには往年の名選手たちの写真! やべえ! 一緒に撮るしかない! レジェンドに混じってリヴィングレジェンドであるサマアイが!! やべえ!

ベンチの向かいにはなんと金ヤン(金田正一。すごい投手)のジャイアンツ時代のユニ! やべえ! こんなの残ってんのかよ! よく見ると、ウール製! 暑そう! 生地の感じよすぎ!! 歴史感じる~。その横には王貞治のユニ! マジかよ! やべえ! 喉枯れそう! その奥には何故か日本刀……もしかしてこれは! 王選手が練習で振っていたというあの日本刀?? そう! その現物でした。おもろい。こんなものまで展示されているなんて……。


壁についてるテレビ、佐々木郎希がひたすらアウトをとる映像が永遠流されている。なんだろ? 近づいてみるとテレビの下のパネルに歴代の三冠王と完全試合達成者一覧が掲げられているではないか! どうやらこのテレビには完全試合達成時のロウキの動画と、村上がひたすら56号ホームランを打つ映像が流れるようだ! うおー最高。なんだよそんなん最高じゃんか。それにしても、三冠王って少ないんだなあとパネルを見て思う。その中にあって、3回もやってる落合まじやべえな。数字的にもやべえし。すげえや。

展示の順番と前後します! 野球ファン垂涎の「現物」はまだまだあって、一番はやっぱりWBC関連! だいぶ後半の方に飾られていました! 今まで日本が獲得した3つのトロフィーはもちろん、2023年の準決勝メキシコ戦最後の最後で試合を決めた村上のサヨナラ2塁打の球なんかもあります! やばいでしょ。あの実物がまじで目の前にあるってやばいでしょ。もちろん決勝でトラウトから三振取った大谷が投げたスイーパー、あの球もある。やべえ。あと、例のペッパーミルも飾られてましたよ。世界で唯一じゃないですかね、伝説のペッパーミルは。

そういうもんを見ながら、野球ってワンプレーワンプレー切れるのがいいだよなあなんてことを思うんでした。「あの試合のあの回のあの球」とか「あのバット」とか「あのグローブ」とか「あのホームランボール」とか、伝説を保存、「これがそん時のアレなんすよ!」って取っておける。で、僕らは「これがあの……伝説の……」って眺めることができる。こんな幸せなことありますかね。僕は幸せでしたよ最高に。
博物館のメインといえる殿堂ホールには日本野球の発展に大きな貢献をした方々の功績を永久に讃え顕彰するために殿堂入りされた方々の表彰レリーフ(ブロンズ製胸像額)がズラッと飾られています。入り口横のコンピューターで検索もできるので、推しのチームからどんな人が殿堂入りしているのか調べたりすることもできますよ!
取材させていただい日は長嶋茂雄さんが亡くなられた翌日だったため、レリーフには別れを惜しむ方々からのお花が捧げられていました。長嶋さん、ありがとう! 安らかにお眠りください。

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野球の歴史・流行り方を知って、ポケモンを思い出した
さて、置いてけぼりになっていますでしょうか野球に興味のない皆様。そんな方はもうここまで読み進めていないんじゃないかと思いますけどもうちょっとだけ踏ん張って書いてみようと思いますよ。ここからは野球の歴史についてです。
野球殿堂博物館は主に博物館事業と殿堂事業を通して野球の素晴らしさ・面白さを伝えていくために運営されていますが、その一環として野球の歴史についても僕たちに教えてくれます。
博物館中盤のゾーンは、野球というスポーツが発生し広まっていった時代のことを学ぶことができます。他のゾーンと同様当時の現物(グローブやユニホームやバット……これらの素朴な造形、質感、やばいです超見もの)が数多く展示されるんで、博物館なんで当然っちゃ当然ですが、かなり博物的な知的興奮が爆発することうけあいでございます! 現役の野球選手を知らない人や、野球のルールさえ知らない! って人もひとつの未知の物語として楽しめるかと!

どういうふうに野球が日本に来て広まったのか、書いちゃうと来館する楽しさが減っちゃう気がものすごいするんで、ここでは詳しく書きたくない気持ちがあるんで、ちょっと触りだけ!
野球ってどうやらアメリカの南北戦争時に兵士の間で流行り出したスポーツらしいですよ。で、戦争のあとにあるひとりの元兵士のアメリカ人が東京大学の前身の学校に教師として雇われた。彼は英語とか数学の教師だったけど野球がめちゃ好きで、休み時間に一人でやってたんだけどそれを見た生徒たちが「なにそれ!」と食いついて、そこから広まった、というのが第一のルートだそうです。
明治5年からキャッチボールをするようになり、明治6年にはグラウンドが整備されて試合が行われたとのことだから、急速に流行ったんだなってわかります。
ポケモンを思い出しましたねえ。ポケットモンスターって僕が小学4年ごろに発売されたんですけど、最初はそこまで超有名でもなくて、クラスで2人くらいが放課後家帰ったあと公園のベンチに座ってゲームボーイで遊んでる感じだったんすよ、僕の住んでた団地では。
「なにやってんのー」って声かけると「ポケットモンスターっていうゲームでけっこう面白んだ」「へー」「あー。あのCMやってるやつかあ」くらいの感じで、「オレも買ってみようかなー」って流れで、だんだんだんだんそのベンチの輪が広がっていった。いつの間にかクラスの半分くらいはポケモンやってる。おそらくそんな光景が全国各地で起きて、いつの間にやら世界中の誰もが知ってるゲームになってた! あくまで僕の主観なので、実際にはもしかして最初から大ヒットしてたのかもしれないんだけど。僕としてはそんな印象で。
なにが言いたいかっていうと、最初からそのゲームの面白さって変わってないというか、ポケモンも野球も面白さがギュッとゲームの中に、ルールの中にあって、それに気づいた人の連鎖で自然と広がっていった、って、これなんかいいよねって思う。
あ、そうそう野球が日本で広まるきっかけは第二のルートもあるんですけどそれはぜひ来館していただいて、知っていただければ!!
というわけで野球殿堂博物館、書ききれなかったまだまだ面白い展示いっぱいありますのでぜひ実際に足をお運びくださいませ!
野球殿堂博物館
アクセス:東京ドーム 21番ゲート右側
開館時間:10:00〜17:00
※東京ドームでプロ野球開催日は、18:00まで
※最終入館は閉館の30分前まで
※再入館はできません。
休館日:月曜日
(但し、祝日・東京ドーム野球開催日・春・夏休み期間中は開館)
年末年始(12月29日〜1月1日)
https://baseball-museum.or.jp/