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その選曲が、映画をつくる

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキンとレディ・ガガが歌い踊ることの意味

2024.10.9

#MOVIE

本作は、今日のエンターテインメントのあり方を自ら問うている

このような退廃の描写に、かつて『ジョーカー』公開時に同作へ盛んに投影された「社会的な問題意識」に似たものを見出すのは容易いだろう。実際、今作の内容からメディアを通じた人々の社会意識の変化というお馴染みのテーマを取り出すのは苦でないし、スペクタクル化が加速した社会における「推し文化」の暴走という、より現代的でトピカルな問題への目配せを感じ取るのも可能だろう。さらにいえば、このような問題意識の置き方には、他でもない前作の『ジョーカー』が、実在の人物たちの背中を押し、模倣者を多数生み出したという「現実」の現象への、ある種の「梯子外し」とシニカルな「けじめ」が託されていると考えることもできるだろう。

しかし、である。私にはそれでもなおこの『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が、一つの野心的な映画作品として、単なる「社会問題の写し鏡」へと簡単に回収されることのない稀有な魅力を放っているように感じられる。その大きな理由は、上述のようなトピカルな考察をおびただしく喚起させることにも増して、(まがりなりにも今なお)エンターテインメントの象徴であり続けるハリウッド産のメジャー映画作品それ自体が、現代のクリエイティブ世界においていかなる存在でありうるのか、自ら根本のレベルから問いかけようとする蛮勇が刻まれているということにこそあるのではないか。

そう。この映画が果たしてミュージカル映画であるかのどうかという(自問自答含みの)問いには、現実世界と虚構を分け隔てたり混ぜわせたりする巧みな操作によって、様々な「中断」や「統合」を刻み込んできたハリウッドエンターテインメントの歴史を、今この2024年において(とにき批判的に)継承するにはどのような表現がありうるのかという疑問が、遠鳴りのようにこだましているのである。私達が、この作品から種々の豊かな思索と教訓を引き出せるのだとしたら、他でもないその問いの存在こそが、そうした豊かさの源泉を成しているのだ。

世界はステージさ

ステージは世界なのさ

それがエンターテイメントというやつさ!

“That’s Entertainment”

たしかにそうかも知れない。いやしかし、本当にそうなのだろうか。この一風変わった(非)ミュージカル映画は、馴染み深くも常に新鮮でありつづけてきた問いを、私達に投げかけている。

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』

2024年10月11日(金)より全国劇場公開
監督・脚本:トッド・フィリップス
出演:ホアキン・フェニックス、レディー・ガガほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
© & TM DC © 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories

https://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie

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