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テニスの映画ではなく、リズムと激情の映画だ
本作『チャレンジャーズ』はテニスを題材とした「スポーツ映画」の外形をしているものの、実のところそれはあくまで一つのモチーフに過ぎない。これはずばり、リズムと激情の映画だ。テニスに己を捧げる女性と、彼女に並々ならぬ熱情を抱く二人の男達が、互いを刺激し、誘惑し、鼓舞し、打ち負かそうと心身を躍動させるその様が、言葉通りリズミック極まりないやり方で表現されていく。テニスのラリーのように交わされる激しいパッションの応酬と、ときに訪れる不安と停滞。それらの織りなすリズムが、彼らが形作る三角形を膨張させ、歪ませ、鋭く尖らせていくのだ。
そうしたリズムを生み出している主要因は、何よりもまず巧みなショットとアグレッシブなカメラワーク、入念なモンタージュだ。各プレイヤーの主観ショットが軽快に重ねられる中、強烈なスマッシュがカメラに向かって放たれる様は、有り体に言えば、まるで鑑賞者自らがテニスコートに立って懸命にラリーを行っているような感覚にさせられる(実際に私は、カメラへと高速で向かってくるテニスボールに対して、つい身をかわしてしまうほどだった)。こうしたシーソーゲーム的なリズムは、コート外のやりとりにも敷衍され、ほぼ全編にわたって特異な緊張感が持続する。
