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NEWS EVENT SPECIAL SERIES
オカヤイヅミの「うちで飲みませんか?」

小林エリカと語る、インドで考えたこと。楽しい体験と酷い状況は、同時に存在し得る

2025.3.31

#BOOK

酷い状況と楽しい思い出は、どちらも存在する

オカヤ:植民地支配で考えたことがあってさ。いま「さす九」(※)の話題が紛糾してるけど、私の父の故郷も、保守的で男尊女卑の感じが強かったのね。母はそれを嫌がったけど、その母も、自宅に父の友達が来てるときには台所にかかりきりで、子どもの私はビールを運んでいって。

※九州地方に男尊女卑的な慣習が見られることを「さすが九州」と揶揄するネットスラング。「九州に対する差別だ」と批判を浴び、その批判に対して「男尊女卑が根深いことは事実だ」との批判も上がり、議論が紛糾している。

小林:うん。

オカヤ:それで、そういう時に、台所で母とごはんを食べたりしたのが、子ども心にちょっと特別な楽しい思い出として残ってるんだよ。それがいい思い出だからって、なら女は台所にいればいいじゃないかっていう話ではないし、一方で楽しかったことに対して「それは悪いことだったから、懐かしんではいけない」というのも違う。

小林:そうだね。

オカヤ:植民地時代にも、例えば支配していた側の子どもと現地の子どもが仲良くなって、楽しい青春を過ごしたりもしていると思うのね。その思い出を否定するのも、植民地支配を肯定するのも、違うじゃない。

小林:そうだよね。戦争中に風船爆弾を作っていた高等女学校の女の子たちのことを資料や証言をもとに小説に書いたのだけれど、酷い戦禍のただなかなのにそれでも、楽しかった思い出、という瞬間があるの。風船の中でお菓子を食べたりとか、風船づくりの作業中にぬいぐるみを隠して笑い合うとか。その風船が兵器になって、やがて人を殺すことになるのだけれど。その複雑さこそが興味深いというか。

オカヤ:そういう複雑な部分こそ保存しておきたいよね。私もそういう本を描きたい、読みたいと思ってる。

書籍情報

『わたしは なれる』
作・絵:サンギータ・ヨギ
訳:小林エリカ
発売中
価格:3960円(税込)
green seed books

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