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東京出身者 / 地方出身者それぞれの「東京にいる」ということ
オカヤ:東京にいると、日本の一部分のことしか見れていないのでは、というのも思うよね。
鳥飼:それはめっちゃ思います。ちょっと前に、自分の描くものは東京の都会の人を前提としているということに気づいて、ガーンとなったんです。日本の9割の人のことを前提としないで、何を描いているんだろう、って。
オカヤ:田舎から都会に出てきた人は、都会の人以上に、田舎に対するネガティブな感情があったりするよね。
鳥飼:そういうテーマはすごく大勢の人に響くんだと思うんです。山内マリコさんの小説とか、憧れとルサンチマン的なものと、いろいろな感情が同居した上で、東京の屋根の下のものを描いていて、良いなと思いますよね。私は、そういうことを思っている人にリーチできていないな、というのはある。
オカヤ:うん。でもその気持ちが皮膚感覚としてわかるようにはもうなれないからな……。
鳥飼:一方で私も東京の出身ではないから、東京で育った人に「ここが地元なんだ」という安心感のようなものがあることが、すごくいいなって思って。
オカヤ:(東京出身者としては)なんかすいません、とも思ってるよ。恵まれてるんだよ、みたいなことをすごく言われるし、実際そうだから。
鳥飼:ああ、それもそうか。近くに親や親戚もいて、自分が東京にいることが自明な強さというか、何もなくてもいる理由があるというのが、いいなって思ってる。迷いがないというか。
オカヤ:ただ地元を離れていないだけという、保守性の面もあるんだけどね。
鳥飼:というのも含めて、東京じゃないところに行ってみたらいいんじゃないかなって思ってます。その方が「いろいろやったな」という人生になるな、って。
オカヤ:刺激のある方へ。鳥飼さん、これからものすごい冒険をしそうですね。

書籍情報

鳥飼茜
『バッドベイビーは泣かない』(4)
2025年9月22日(月)発売
価格:792円(税込)
講談社