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あの人と巡る、東京アートスポット

片桐仁は「わからない」を楽しむ 「アートにも人生にも正解はない」

2024.10.31

アートウィーク東京

#PR #ART

美大入学後、「アートはつまらないのかも」と悩んだ時期も。訪れた転機とは

―幼少期に芽生えたアートへの関心をもとに、高校卒業後、多摩美術大学の版画専攻に進んだのですか?

片桐:そうですね。高校の課外学習などで美術館に行き、さまざまな作品を目にするようになり、最初は「何これ? さっぱりわからん」と思いながら見ていましたが、次第に「何を表現しているんだろう?」と考えることが楽しくなってきたんです。それでも幼少期に観に行った『ゴッホ展』を上回るほどの衝撃はない。それで改めて、自分が「ゴッホのような画家になりたい」という夢を持つようになりました。

しかし僕の高校時代はインターネットがなく、知らない世界とつながる方法も、自分が描いた作品を人に発表する方法も、簡単に調べることができなくて……。「美大に進めばゴッホになれるかも」と思い、わけもわからないまま美大予備校に入りましたが、作品はゴミのように扱われるし、上から全部描き直されることも……。漫画の『ブルーピリオド』の世界みたいに優しくはなかったですよ(笑)。

―過酷だったんですね……! 現在は平面作家ではなく造形作家としてユニークな作風を確立し、キャリアを積んでいらっしゃいます。大学に進んでから、表現における転機があったのでしょうか。

片桐:数年間、予備校の厳しい環境の中で絵を描き続けて、無事美大に入ったら入ったで、次は教授陣から「受験絵画は芸術ではない」と言われる始末! 海外の美大受験はポートフォリオと面接が主流ですが、日本は実技重視の試験で。窮屈さを感じて「アートはつまらないのかもしれない」とぼんやり思ってしまうこともありました。

美大を卒業してから、ここで語られている会話が、アートの内側だけで閉じてしまっているというか、「自分たちのやっていることがアート以外の社会とどれくらいつながっているのだろう?」という感覚をどこかで持っていた気がします。

―片桐さんは、アートを通して社会とつながる、ということに意識的であるように思いました。

片桐:そうかもしれませんね。予備校や芸大・美大の神話を過信しなくなったからこそ、いい意味で、自分の表現を追い求めるようになりました。僕は、画家になりたくて油画専攻を目指していたものの、試験に落ちてしまったので補欠で現役合格できた版画専攻に入ったんです。けれど版画専攻に入ってからも、結局版画ではなく造形作品ばかりを作っていました。造形のほうが楽しく、周りからの反応もよかったので、そのまま続けて今も造形作家として粘土アートやソフビなどを作っています。大学時代は、よく友人たちに「絵は下手なのに、造形はめちゃくちゃ上手いな!」と褒められて、嬉しい反面複雑な気分にもなっていました(笑)。

片桐が作った古代遺跡風のiPhoneケース。目の部分をパカっと開くとカメラのレンズが覗くユニークな仕様。上部も開閉可能で、中にはびっしりと爪楊枝が……。「スマホは万能ですが、歯の隙間の汚れまでは取ってくれないんですよね」。
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