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明日を担うオッドたち

天真爛漫にメロディを奏でるNTsKiについて知っておくべき13のこと

2024.9.13

#MUSIC

今年7月に『FUJI ROCK FESTIVAL』初出演を果たし、国内外からの注目を集める二足の草鞋を履くNTsKi。天真爛漫にメロディを奏でる傍ら、アートワークやMVのスタイリング・ディレクション・編集を自らが担う。真夏のゲリラ豪雨に見舞われながら沈黙を絢爛に破り、インタビューをスタートさせる。

エヌ・ティー・エス・ケー・アイの生みの親

京都の海の近くで育ち、高校を卒業してすぐに上京して東京の写真専門学校に通い、卒業後に渡英しました。イギリスと東京、京都を行ったりきたりする生活を送っていたけど、曲作りは基本的に京都で行うことが多かったです。

写真学生のとき、写真のコンペティションで賞を受賞し、パリ4区にあるポンピドゥー・センターで展示をすることになり初めてパリに行きました。ポンピドゥー・センター近くのレストラン2階で展示のオープニングパーティーが催され、下の階には黒の衣装に包まれた人たちがたくさんいて。Yohji Yamamoto (ヨウジヤマモト)のパリコレクションのアフターパーティーが行われていたみたいで、よくみると山本耀司さんがいました。そのとき、私が初めて買ったYohji Yamamotoのドレスを偶然着ていたこともあり、直接話しかけに行かなければと彼を目掛けて向かいました。チャンスが来て彼と喋ることができ、私の名前を伝えてサインを貰うと、なぜか大文字のNとT、小文字のs、大文字のKと小文字のiで「NTsKi(エヌ・ティー・エス・ケー・アイ)」だったんです。なんかイケてるよね? と思い、そのときから山本耀司さんが書いてくれた名前をアーティストネームとして使ってます。

NTsKi(エヌ・ティー・エス・ケー・アイ)
京都出身のアーティスト、ミュージシャン。優しくもどこか不気味さの漂うボーカルと多様な音楽性が混在するトラックを制作する。アートワークやMVにおけるスタイリング、ディレクション、編集までを自ら担当。2021年には〈美術手帖〉が選ぶ2020年代を切り開くニューカマー・アーティストに選出。国内外の著名アーティストからの注目度も高く、Giant Claw、食品まつり a.k.a foodman、田我流やKMなどの作品へも参加。その他に、〈Dirty Hit〉の新人シンガーWalliceへの作詞協力、落合陽一氏が統括ディレクターを務めSXSW2019に出展した経済産業省主催日本館や、ヴァーチャル・シンガーte’resa、ファッション・ブランドへの楽曲提供などがある。2021年8月6日、ファースト・アルバム『Orca』を米オハイオのレーベル〈Orange Milk〉/〈EM Records〉よりリリースし、BandcampのAlbum Of The Dayに選出されたほか、Apple Music Japanのエレクトロニック・アルバム・チャートにて3位を記録、Apple Vinegar Awardにて特別賞を受賞するなど好評を得ている。SXSW2023に出演し、開催地の米テキサスのほか、ニューヨークでも自身初のライヴを実施。2023年11月10日、セカンド・アルバム『Calla』を〈EM Records〉からリリースした。
https://ntski.com

全ての原動力は好奇心から

マンチェスターに住んでいたときのルームメイトがLogicっていう音楽制作ソフトウェアを使っていて、私も使ってみたい! という好奇心で音楽の制作をし始めました。マンチェスターでは周りに音楽をやっている人が多くいたんですけど、音楽に対して仕事仕事しているというよりも、もっと生活の中に音楽が溶け込んでいる感じがあって、それが自分に合っていたんだと思います。私の夢はミュージシャンです! って意気込まなくても、生活の延長でやればいいよね、みたいな。渡英した理由も、フランスで展示をしていたときに仲のよかった友達がイギリスにいて、ふらっと遊びに行ったときに覚えた、バーやクラブのハシゴだったりハウスパーティーが楽しかったのがきっかけです。

音楽はずっと身近な存在

自分が小学生のときにMTVを見て聴いてたAaliyah(アリーヤ)から影響を受けてると思う。物心ついたときには彼女の音楽が身近にあって、自分で音楽を作るようになって改めて聴いてみたら、ビートとかボーカルの入り方がドープだったことに気がつきました。

京都のベッドから世界へ羽ばたく

歌ったり、音を制作したり、何かを作ることが好きで。今のスタイルを追求して制作しているというよりも、やりたいことを無二無三にやっているという感じかな。家で1人でベッドに寝転んで曲を作って、それをステージの上でみんなに共有できるのは単純に楽しいって思うんです。

私はMVのスタイリング、ディレクション、編集も一括して1人で行っているんですけど、ロンドンを拠点にしているディレクター・CGアーティストのProsperとは、私が考えてることだったりバイブスも合っていたので、ロンドンから京都に呼んで一緒に制作をしたりしてました。またそういう人と出会えたらタッグを組んでやってみたいです。

水の中がNTsKiの落ち着ける場所

私は友達と遊んでるときによくインスピレーションが浮かんできます。海で遊ぶとかでもいいし、クラブで遊ぶとか、とにかくガンガン遊ぶのがキー。昔から水の中に入るのが好きで、気分をリフレッシュしたいときは海とかプール、温泉でもいいけど水の中に入る。京都にいたときも暑くなったら服を着たまま走って海に飛び込んで、濡れたまま家に帰る、みたいなことをしてました。犬も暑くなったら、ワーッと水に突っ込むじゃない?(笑)

偶発性から生まれる必然性

新曲“Labyrinth of Summer (gentoku Remix)”のアイディアは、私生活でも仲の良いヴィジュアルアーティストのAsahiNaと話しているときに生まれました。AsahiNaとクリエイティヴディレクターのIori Yamakiが主催している『TREATMENT(トリートメント)』というアートプロジェクトがあって、“Labyrinth of Summer”の2024年バージョンにgentokuを入れて作りたいねって話をしていて。音楽活動を一番最初に始めた2017年くらいに、“Labyrinth of Summer”を制作し、今までライブでバンドセットであったり、いろんなバージョンを披露してきた思い入れの強い曲で、AsahiNaのお気に入りの曲でもあったのでこの曲を選びました。AsahiNaは、“Labyrinth of Summer (gentoku Remix)”のジャケットのアートワークや『フジロック』でのVJも担当してくれています。

Labyrinth of Summer (gentoku Remix)

ジャンルのボーダーを超えるアートイベント

パーティーとかイベントでは全体の雰囲気が合うように演者が組まれがちだけど、AsahiNaが誘ってくれた『TREATMENT』は敢えてジャンルが違う人たちが合わさっていて、普段出会うことのないお客さんたちも交わっていました。そういうパーティーって結構ちぐはぐしがちなんだけど、『TREATMENT』はテーマがしっかりあるからまとまってていい感じのバイブスになってたと思う。今回は映像中心のテーマだったので、映像も意識してライブセットを組みました。

セクシャリティを断定するのはまだ早い

私、中学生くらいまで男の子になりたくて。スカートを穿くことに違和感を感じてズボンばっかり穿いてました。今もズボンを穿くことの方が多いけど、ファッションでジェンダーを判断されるんだと感じて、敢えてスカートを穿いてみたり、こういう自分もいるんだ、と楽しんでいる自分もいます。初めて好きになった人は女の子だったし、中高生のときに周りが彼氏欲しいって言ってたとき、そんなことを一切思わなくて。自分が女性であることに納得はしてるけど、もし来世があって生まれ変われるんだったら男がいいなと思う。自分のセクシュアリティを意識しだしたときに、男になりたいって考えてたから、何年も時間をかけてゆっくりと自分は女なんだみたいに理解していった。でも、今もわかんないかも(笑)。

ジェンダーバランスの葛藤

イベントのラインナップ的に、男性の割合が多いからジェンダーバランスを取るために女性を致しかたなくブッキングしたのかなっていうのは何となく数回感じたことがあります。そういう役回りだったとしても、ぐっと堪えて今後もっと女性の活躍ができる機会が少しでも増えるんだったら、いいのかな、みたいな葛藤はある。ミュージシャンだけじゃなくてDJでも活躍している女性が増えてきているから、これからの世代はもっとやりやすくなってくるんじゃないかな。自分もそういった意味ではコミュニティに還元できればとも思って活動してます。

パーティーはつづく

2024年の2月に、セカンドアルバム『Calla』のリリースパーティーを京都、名古屋、東京、北海道で開催したときは、オーディエンスと一緒にパーティーをするというのを意識してタイムテーブルやラインナップを組みました。私の体感だと京都はゆるくずっとオーディエンスがいてくれるから、長く踊れる感じのミックスをする人が多いイメージで、私もそうしています。東京は、そもそも開催されているパーティーの母数が多いので、イベント中でもどこか他のクラブだったり別の場所に行ける選択肢があるから、オーディエンスを離さないためにフロアでロックさせるような選曲が多いイメージです。全員ってわけではないけど、オーディエンスも、このパーティーで遊び倒してやるみたいな感じはあまりしないかも。

クラブのフロアでは皆平等っていうか、踊ってる時は性別も気にならないし何者でもない感覚が強くて、東京はそういう意味で何者にでもなれるけどね。北海道は、クラブにいる全員がこのパーティーを全力で楽しむんだっていうバイブスでした。デイイベントの予定が、雰囲気が最高で出演者もオーディエンスも朝まで残って遊んでて人生でベスト5に入るぐらい楽しい夜でした。北海道の人にとっては見慣れた景色だと思うけど、イベント終わりの朝、外に出る扉を開けたら一面雪景色でそれも夢みたいな景色だった印象が強く残っています。イベントが終わった後、ホテルに帰ったものの豪雪で飛行機が欠航になってしまい行くところがなく、パーティーをした場所に戻るとスタッフの人がDJを続けていて、私と同じく状況のいく当てのない人たちも戻ってきてまた踊って、ずっと終わりのないパーティーのようでした。

遠そうで近い生業で二足の草鞋を履く

日本だとDJの人とミュージシャンの人が別々に捉えられがちだけど、海外で売れてるDJは自分で曲を作って、トラックIDを持ってる人が多いイメージです。曲を持っていれば、他のDJが流してくれて名前が売れていったりすることもあるから、ミュージシャンとDJがお互いにDJもできて曲も作れたら、そこに垣根はなくていいんじゃないかな、と思ってます。あと、単純に友達のいいトラックをDJで流せるのもいいよね。

DJをするときは、この曲をミックスするとこんな盛り上がり方するんだとか毎回新しい発見だったりフィードバックが絶対にあって、その「手応え」から実際に曲を制作してライブを行う、といったいい流れをぐるぐると回っています。

『フジロック』初出演を果たす

2年か3年前にフィーチャリングでゲストボーカルとして『フジロック』に出たことはあるけど、「NTsKi」個人で出演したのは初めてでした。山の風がファーってステージに吹いてきて、気持ちよかった。パフォーマンスが1時間だったから、歌とDJを混ぜて、クラブの延長線みたいな感じのセットにしました。私を見てっていうよりかは、自由に踊ってほしくて、クラブのバイブスをフェスに持ってくる様に意識してプレーしました。

やりたいことのために挑戦をやめない

今はDJをするのにやりがいを感じています。もちろん、ライブをいろいろな場所でやれたら嬉しいですが、DJをもっとたくさん披露できたらと思っています。他のアジアでもプレイして遊んだりしてみたいな。ここ最近で一番楽しみなのは、10月12日〜14日に石川県滝ヶ原町で開催されるフェスティバル『ishinoko』に出演することです。非日常のフェスティバルって日常があるから特別だと感じられるけど、『ishinoko』は日常の延長線上にフェスがあるみたいな感じで「音楽と日常での生活って地続きでもいいんだ」と思わせてくれる体験ができました。みんなと自然の中で一緒に踊るのが楽しみです!

Hair and Make-up by Takahiro Suganuma , Nails by Taichi Yamane
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