う潮の舞台『疾走』が9月27日(金)から29日(日)まで、東京・池袋のスタジオ空洞で上演される。
う潮は、ハイバイ作家部に所属しているながおあいりによって、2023年に活動を開始した演劇ユニット。思い出や日常の中に埋もれている人と人との交わりを拾い上げ、ざわざわと感情に波を立てるような演劇作品づくりを目指しているという。
同公演は、う潮としては2回目の新作公演となり、「あなたの居場所にもなれなかった私たちは、この世界に対して何が出来るだろう」というフレーズを軸に、バンドメンバーの別れと再会を描く、ながお自身の大事な思い出に踏み込んだ作品となっている。作 / 演出を手掛けるのは、ながお。出演者には、結木千尋、松﨑友利、古賀彩莉奈、松枝春衣、鬼頭すみれ、前田航斗が名を連ねている。
ながおあいりのコメント
う潮主宰のながおあいりと申します。
1年ぶりの新作公演をやります。う潮としては2回目の公演です。
この1年間は演劇をやっている自分自身のことや将来のことを絶えず問われ、
選択を迫られた時期でした。
そんな中で、演劇を作りたくてたまらないような、
だけどやっぱり演劇を作りたくないような、
シーソーみたいに気持ちが揺さぶられる毎日を過ごしてきました。
演劇における私自身の興味関心は、自分の半径1ートル以内の関係性を描くことだと思ってきました。 それは、いくらフィクションで大きな主題を描いても、そこに出てくる一人一人の人物には私たちと同様に「暮らし」があって、 様々な人と関わり合いながら生きていて、小さなことで躓いたり、周りの人と摩擦が生まれてしまったり。
そういうことは決して取るに足らない問題なんかじゃなくて、むしろ、私たちが生きる上では、社会という枠組みのことよりも、よっぽど大問題であるんじゃないか。
だから、「思い出や日常の中に埋もれている人と人との関わりを拾い上げ」て、観客誰もの人生に接続出来るような、そんな物語を紡ぎたいと思ってきました。
しかし、半年ほど前、突如、
「大きな世界と小さな世界は繋がっているんだ…!」
と、ブッダが悟りを開いたかの如く強烈な気づきを得た日があったのです。
その日私は家からほど近い図書館で、大学の期末試験最終日に向けて勉強をしていました。休憩がてらスマホを開くと、なんとちょうど岸田國士戯曲賞の最終候補作が発表されたところ。
そこにノミネートされていたとある劇作家。
何を隠そう、私は三日ほど前にその劇作家が主宰する劇団の作品を観て、「こんなクソみたいな現実にフィクションでどう立ち向かうか」という主題(少なくとも私はそう受け取った)を描いたその作品にいたく感銘を受けていたのです。
数か月間沈みっぱなしだった私の心は浮かび上がり、いやそれのみならず、作品から発された熱の塊をしかと受け取った私の心もビッカビカに燃え盛りだした矢先のこと。
私の心の救世主が、戯曲賞にノミネートされ、社会的にも(それは小さな社会であるかもしれないけど)、評価された。
その瞬間、「大きな世界と小さな世界は繋がっている」的な閃きがピカーンと私の頭の中を貫いたのです。
私たちは、取るに足らないことに悩みながら必死に生きている。
でもその背景にはいつだって、社会がある。私たちの取るに足らない悩みだってなんだって、この時代、この社会との関わりの中で生み出されるんだ。
私たちの半径1メートル以内の小さな世界と、政治やら経済やら国交やらを動かす大きな社会は、決して切り離されたものなんかじゃなくて、全て地続きにあって、全て接続している。
こう書いてみれば、これこそが取るに足らないというか、途端に当たり前で凡庸な気づきに思えてしまうけれど、その時の私にはこの事実が、この世の真理であるかのような輝きを持って降り注いできたのです。
この閃きは、「演劇なんかやって何になるんだろう」という厭世的な思いと戦い続けていた私に、新作を作らせるのに十分すぎるエネルギーを与えてくれました。
そんなこんなで構想し始めた本作、『疾走』。
少しでも気を抜いたら途端に崩れ落ちてしまいそうな、私自身の大事な思い出に踏み込んでいった作品です。
小さな世界と大きな世界が交差する中で、やっぱり「こんなことして何になる?」「何をしたって何にもならないし、どこにも行けないんじゃないか」という思いに打ちひしがれそうになりながら、それでもなおその無力感と戦う物語になりました。
「あなたの居場所にもなれなかった私たちは、この世界に対して何が出来るだろう」
そして、もう一つ。
本作を作るにあたっては今までとは異なる、新たな物語へのアプローチが必要になるんじゃないかと考え、その方法を模索してきました。いや、今だって模索している最中で、深い霧の中でそこにあるのかも分からない物を探り当てようとしているかのような感覚。
そうすることを選んだのは、「小さな世界と大きな世界は繋がって」いるのだし、それは観客みんなの人生にも繋がっているのだということを、しっかり届けきりたいと思っているからです。
なので私にとって本作は、「挑んだ」作品。しっかり口に出してそう言えるのは、久しぶりのことかもしれない。
今回もまた、心にざわざわと波が立つような作品になると思います。
作品のどこかに自分を見つけてくれたら、それほど嬉しいことはありません。
う潮 『疾走』
脚本・演出 ながおあいり
「バンドを組んでいるんだ、すごくいいバンドなんだ。」
ステージに立つ私たちは、狭い体育館に熱狂の渦を作った。
音を重ねるその瞬間、私たちの4人の魂は確かに通じ合っていた。
と、思っていた。
文化祭での演奏を控える高校最後の年、ドラムの彼女は学校を辞めた。
彼女の孤独と息苦しさから目を背けた私たちの、バンドの音は鳴り止んだ。
あれから4年。遠くの国では戦争が起きている。
同窓会でのバンド演奏を依頼された私たちは、再び彼女に会いに行く。
あなたの居場所にもなれなかった私たちは、この世界に対して何が出来るだろうか。
【出演】
結木千尋
松﨑友利
古賀彩莉奈
松枝春衣
鬼頭すみれ
前田航斗
【日程】
9/27(金) 14:00/19:00
9/28(土) 14:00/19:00
9/29(日) 13:00/17:00
※受付開始・開場はともに開演の30分前を予定しております。
※開演時間を過ぎてからのご入場はお断りさせていただく場合がございます。
お早めにご来場ください。
【会場】
スタジオ空洞
〒171-0014
東京都豊島区池袋3-60-5 B1F
JR線・東武線・西武線・東京メトロ各線
池袋駅 C6出口より徒歩8分
【料金】
一般:3000円
U-22:2500円
応援チケット(特典付き):5000円
※全席自由席となります。
【ご予約】
ushio-stage.com/reserve_02/
ご予約は各公演日の前日24時まで受け付けております。
当日券情報については各SNSにてお知らせいたします。
予約開始は7月上旬を予定しております。
【お問い合わせ】
メール: ushio.stage@gmail.com
【SNS・Web】
X:@ushio_stage
Instagram:@ushio_stage
Web:ushio-stage.com
【スタッフ】
舞台監督・舞台美術:蓮見勇太
音響:山中太郎
照明:鈴木俊輔
制作:関美穂
宣伝美術:黄木日菜子