7月12日(金)に公開される映画『大いなる不在』のメイキング写真が解禁された。
幼い頃に自分と母を捨てた父が警察に捕まった報せを受けた卓(たかし)が久しぶりに父の元を訪ねると、認知症で別人のように変わった父の姿があり、父の再婚相手の義母は行方不明になっていた――。父と義母の間の謎を、卓が手探りで紐解くサスペンスヒューマンドラマとなっている同作。卓を森山未來、父・陽二を藤竜也、卓の妻・夕希を真木よう子、義母・直美を原日出子が演じている。
同作は、自身でプロデューサーも務めるなど、インディペンデントなスタンスを貫きながら映画を制作する監督・近浦啓による約5年ぶりの新作。メイキング写真とともに、森山と藤が近浦について語ったエピソードも公開となった。
森山は「近浦さんは映画に関わることを何役も担っているんです。最初にいただいた企画書に、監督、脚本、プロデューサーとすべてに近浦さんの名前が書かれていたので驚きました」と当初の印象に触れ、「近浦さんはクリエイティビティとビジネスの両面をしっかり担保できるのがインディペンデント映画だと仰っていて、その考えが素晴らしいと思いました。ロジックがちゃんとある上に柔軟性もとてもある方なので、一緒にやっていてすごく楽しかったです」と撮影当時を振り返る。
主人公・卓を演じるにあたり、脚本を読んだ時点ではその人物像を理解し難かったと語る森山。「卓は認知症になった父親に対して、困惑しているような、でも実はそうでもないような。キャラクターが見えづらかったので、撮影前に近浦さんとじっくりと話す機会をいただきました。近浦さん自身のお父さんが認知症になった話とかパーソナルな話を聞くうちに見えてくるものが多かったです」と、近浦のエピソードを参考にしながら役作りをしていった様子を語った。
また、劇中で卓が着用している衣裳の多くは近浦の私物だという。「衣裳合わせの時点では、卓がどんな服を着たらいいのかもわかっていなかったのですが、なぜか、近浦さんの洋服を着たらしっくりきたんです。サイズは若干僕より大きいものの、『この感じがいいよな』と思いました」と、監督を信頼しながら作品を作りあげていった様子を話した。
一方、短編映画から3作連続で近浦作品に出演の藤。「近浦さんは、映像作家としてのオリジナリティがあって、自分で新しい映像世界を作って提供しようとする気迫がある」と語り、その手腕を絶賛。自身の出演作を観るのは苦手だという藤だが、「本作はすでに3回も観たんです。自分が出演していることが気にならない。完成した作品を観て、脚本を読んだ時や撮影中の印象とは違う印象を受けました。押し付けがましいドラマチックさや感動はないのにも関わらず、観終わった後には魂の振動を感じるのです」と、自身が出演した作品を観た感想を述べた。
また、『第71回サン・セバスティアン国際映画祭』や『第67回サンフランシスコ国際映画祭』では観客から熱い眼差しと気持ちのこもったスタンディングオベーションを受けたと嬉しそうに振り返り、「これからご覧になる方々にどう受け止められるのかも楽しみです」と、藤は日本公開への期待を寄せている。
『大いなる不在』
監督・脚本・編集:近浦啓
共同脚本:熊野桂太 プロデューサー:近浦啓 堀池みほ
出演:森山未來 真木よう子 原日出子/藤竜也
製作・制作プロダクション:クレイテプス 配給:ギャガ
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
2023年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/133分 ©2023 CREATPS