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インターネット時代が育んだモキュメンタリーを受け入れる土壌
近年、インターネット上ではモキュメンタリーホラーが大きなブームとなっている。『TXQ FICTION』に参加している寺内康太郎が手掛ける『フェイクドキュメンタリーQ』はもちろん、『近畿地方のある場所について』(著:背筋)や『変な絵』(著:雨穴)などのテキストをベースとした創作も、現実と虚構の境界を曖昧にしていくような作風が、モキュメンタリーと重なる。
フェイクドキュメンタリーの特徴として、比較的ローコストで注目を集めやすい点が挙げられる。そういった特性と、誰でも動画を共有できる現在のインターネット社会のシナジーが、昨今のモキュメンタリーブームの理由のひとつと考えられる。また、モキュメンタリーを通じた「考察」をユーザー同士で共有して楽しめる環境も流行の理由に起因するだろう。
さらに、『変な絵』を手掛けた雨穴は、かつてインターネット掲示板で盛り上がった「洒落怖モノ」との共通点を指摘している。
その作品やジャンルを懐かしいと思う世代と新しいと感じる世代、2つの世代ができることで、はじめて大きなブームになります。その点でいうと、かつての掲示板サイト『2ちゃんねる』で流行した“実話風怪談”に慣れ親しんだ世代が、現代風にアップデートされたホラーモキュメンタリーに惹かれているんだと思います。そして、実話風怪談を経験してない世代は、まったく新ジャンルのホラーとして楽しんでいるのではないでしょうか
雨穴“100万部”覆面YouTuber作家が語る「ホラーモキュメンタリー」の流行「大きなブームに必要なもの」|双葉社
2000年代に流行したオカルト板のような、現実と虚構をシームレスに移行する創作に触れてきた世代が、現在の制作側や消費者側に増えてきた点で、モキュメンタリーを受け入れる土壌が培われてきているというのは納得だ。また、そのインタラクティブな手法をYouTubeやSNSといった現代的なメディアに拡張させるクリエイターの才能は見事というべきだろう。