内野聖陽主演の、こまつ座第151回公演『芭蕉通夜舟』が2024年10月に東京・千駄ヶ谷の紀伊国屋サザンシアターで上演される。
『芭蕉通夜舟』はしゃぼん玉座3回公演として、1983年に初演された井上ひさし作の舞台。2012年には鵜山仁が演出を担当し、芭蕉役を十代目坂東三津五郎で再演された。その後も再演が予定されていたが坂東三津五郎の急逝により叶わず、井上ひさし生誕90周年となる2024年に、芭蕉役に内野聖陽を迎え、鵜山仁の演出で11年ぶりに上演される。
同作は40年にわたる松尾芭蕉の俳人としての人生を、一人語りを中心に富士三十六景になぞらえて全三十六景で描く。井上ひさしは松尾芭蕉について「“人はひとりで生き、ひとりで死んでゆくよりほかに道はない”ことを極めるために苦吟した詩人」と称しており、苦悩する芭蕉がやがて到達した視点だけではなく、人生の豊かさや可能性の大きさを描いた作品となっている。出演者には内野聖陽のほか、小石川桃子、松浦慎太郎、村上佳、櫻井優凛が名を連ねている。
【内野聖陽のコメント】
またも一人芝居。いえ、ほぼ一人芝居。前回の『化粧二題』では、見えない透明の劇団員たちが居て、一人で演じていても孤独感はありませんでした。でも今回は『人は独りで生き、独りで死んでいくより他に道は無い』ことを極めるために苦吟した芭蕉さんです。聞いただけでも凄まじい人生!尻込みしそうです。しかし、役者というのも孤独なお仕事です。この作品を読んだときとても共感するメッセージが込められていると感じました。ほぼ一人で芭蕉の人生を背負うのは怖いけれど、井上ひさし先生の言葉の力、鵜山仁さんの熟練の演出、そして黒子役の若い共演者と共に、芭蕉の人生に食らいついて、挑みかかって、俳諧で道を究めた芭蕉の人生をあぶり出したいと思っております。面白いことを深く、そして愉快に、そして真剣に、表現していきたいと、期待と恐怖ないまぜの状態の裏で、私の闘志はひそかに育ち始めております。
どうぞご期待ください。
【鵜山仁のコメント】
『奥の細道』の序文には、「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人也」とあります。芭蕉は旅する、ハイクする、というのが通り相場ですが、この旅は、おそらく人の一生の射程を超えて、月日とともにどこまでも、銀河の果てまでつながって行くはずだと思います。
そんな旅の道案内となるべく、アートがどんな役割を果たせるか、これがやはりわれわれにとっては、大きな関心事です。
今回、内野芭蕉が、40年来の旅のタスキを受け継いで、悠久の旅路の船頭をつとめます。