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新海誠監督作『すずめの戸締まり』でもモチーフとして使われた日本神話

そもそもオカルトは、浮き沈みはあるとは言え、映画において人気ジャンルの一つではある。霊的な存在がドラマの中で描かれることも少なくない。しかし、地上波のドラマ、それも多くの人が目にする時間帯のドラマで、ここまでオカルト要素を全面に出すというのは画期的とも言えるだろう。深夜帯だと『何かおかしい』(テレビ東京系)、『恐怖新聞』(東海テレビ)などの例もあるが、それでも、ここまでオカルトに関わる固有名詞を絡めているのは珍しい。
日本神話をモチーフとした作品で近年、話題になったのは新海誠監督『すずめの戸締まり』(2022年)。主人公の岩戸鈴芽や宗像草太などの名前にも、「天岩戸(あめのいわと)」「天宇受売(あめのうずめ)」「宗像三女神」などの日本神話のモチーフが用いられているし、そこで描かれる「戸締まり」という行為は本作で行われる「事戸渡し(ことどわたし)」と共通する由来があるように思える。そもそも新海誠監督は、『君の名は。』(2016年)以降、『天気の子』(2019年)、『すずめの戸締まり』と、いずれの作品にも日本神話のモチーフを込め続けている。彼の作品が世界的にヒットしていることと、そうした神話モチーフの活用は無関係ではないだろう。
最近では、アニメ化もされた『天穂のサクナヒメ』などのゲームにおいても日本神話がモチーフとして扱われている。海外ドラマを見ても、欧米の作品では、当たり前に北欧神話やギリシャ神話などのモチーフが扱われている。『マイティ・ソー』(2011年)シリーズのように神そのものを登場人物とした作品もある。どちらかと言うと信仰心が薄いとされ、神道より仏教が身近な日本においては、そこまで作品に自国に纏わる神話のモチーフが使われてこなかったのかもしれない。