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『救われてんじゃねえよ』著者・上村裕香インタビュー 悲惨だから「笑ってほしい」

2025.7.3

#BOOK

喜劇として描くことで見えてくる、現実

ー恭介さんとのやり取りは、読んでいるうちに印象が変わっていく、不思議なシーンでした。小島よしおさんのネタが流れるところもそうですが、この作品には笑える部分がちょこちょこ挟まっていますよね。それによって、この作品が悲劇的になりすぎないようになってるなと感じました。

上村:そうですね。喜劇的な視点を入れるということは結構意識していました。

ーそれは、これまで小説を書いてきた中でも意識していることだったりしますか?

上村:はい。大学時代に教えてもらっていた先生が、喜劇作家をしている方で。その先生の「悲劇と喜劇は、起きている出来事自体は一緒なんだけど、視点が違うんだ」という持論にすごく影響を受けています。チャールズ・チャップリンの言葉でも、「人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見れば喜劇である」というのがありますよね。

『救われてんじゃねえよ』で言うと、「母親を介護している女子高生」という沙智の状況は、近くで見ると悲劇的なんです。でも沙智の生活の中には、母親とのブルーレットのやり取りみたいなクスっと笑っちゃうようなところがある。そういう喜劇的な視点を借りることで、分かりやすくはないけど現実の物語が見えてくるんじゃないかと思って、意識的に「喜劇を書くぞ〜!」と思っていました。

ー笑える部分があるからこそ、これが現実なんだな、というのをより感じられた気がします。大学の先生以外で、影響を受けた作家や作品はありますか?

上村:大学生になってから読んだ、松尾スズキさんの『クワイエットルームにようこそ』には、すごく影響を受けています。精神病棟の中で起きている出来事は、ずっとハチャメチャで悲惨なんだけど、見てる視点としては喜劇的なんですよね。

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