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ガイ・リッチーの快進撃が止まらない。最新作『アンジェントルメン』レビュー

2025.4.3

#MOVIE

「非紳士的」、チームプレイ……リッチー映画のエッセンス

第二次世界大戦下で極秘任務を背負った特殊部隊の活を躍描く戦争アクションには快作が多く、古くは『ナバロンの要塞』(1961年)やその続編『ナバロンの嵐』(1978年)、グリーンベレーの元となった部隊を題材にとった『コマンド戦略』(1968年)、将軍救出のミッションを描いた『荒鷲の要塞』(1968年)などが挙げられる。これらに比べると、『アンジェントルメン』はタイトルが表わしているとおり「非紳士たち」、すなわち「ならず者」の部隊の物語だ。そういう点では服役兵たちの活躍劇『特攻大作戦』(1967年)や、戦争に疲れて金塊強奪に夢中になる造反兵たちの奔走をコミカルに描いた『戦略大作戦』(1970年)、近年の作品ならばリッチーも敬愛するクエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(2009年)あたりが近いかもしれない。

© 2024 Postmaster Productions Limited. All Rights Reserved.

そもそも、リッチー作品の多くは「非紳士」的な男たちを描いたものが多い。デビュー作『ロック、ストック~』からしてそうだったし、続く『スナッチ』(2000年)も同様に、ロンドンのダウンタウンを徘徊する悪党たちの群像をアップテンポで描き切った快作だった。他にも『ロックンローラ』(2008年)や『ジェントルメン』もこの系譜に位置する作品だ。代表作『シャーロック・ホームズ』の有名な名探偵でさえも、リッチーの手にかかると紳士というよりはエキセントリックな変人にアレンジされてしまう。『アンジェントルメン』で描かれるのは、これらとは時代や舞台がまったく異なるが、命令を無視することを恐れず、己のルールで行動するアウトローたちの奔走劇という点で共通するものがある。誤解を恐れずに言えば、ロンドンの下町が、大戦期の戦場に変わっただけなのだ。ちなみにリッチーの実父は英国海軍の将校であり、その息子が軍事戦略の世界にある種のなじみがあったことは容易に想像がつく。アフガニスタンの戦場でのサバイバルを描いた前作『コヴェナント/約束の救出』は本作と異なるシリアスな内容だったが、戦争映画は以前から取り組みたいと思っていた大好きなジャンルであると、このときの彼は語っていた。

もうひとつ、リッチーには大好きなジャンルがある。それはスパイ映画。1960年代の人気テレビシリーズ『0011ナポレオン・ソロ』をリメイクした『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015年)で、このジャンルに進出した彼は、『ロック、ストック~』以来の盟友ジェイソン・ステイサムを主演に迎えた『オペレーション・フォーチュン』で、諜報戦をチームプレイ主体で描いて見せた。これはまさに、『アンジェントルメン』にも取り入れられている要素だ。ガスたち4人によるジェフリーの救出作戦からして、大胆かつ豪快な連係が見せ場となっているし、ナチスの戦艦に停止させられた際の反撃もしかり。『007』シリーズのようにジェームズ・ボンドひとりだけが光っているわけではなく、誰ひとり欠けてもなしえることのできないチームプレイが味となっている。

(左から)チームをサポートするリカルド・ヘロン(バブス・オルサンモクン)、マージョリー・スチュワート(エイザ・ゴンザレス)と、島の協力者キャンプ・ビリー(ダニー・サパーニ) © 2024 Postmaster Productions Limited. All Rights Reserved.

『007』ついでに挙げておきたいのは、シリーズの原作者イアン・フレミングの若き日の姿が劇中で描かれること。実際にフレミングは第二次世界大戦期、英海軍情報部に勤務しており、退役後に作家に転身した。この頃の体験が『007』シリーズに生きたことは明白だ。ボンドの上司「M」という呼び名は『アンジェントルメン』ではフレミングの上司の呼び名となっている。この辺のディテールは、どこまでが実話かわからないが、スパイ映画好きのリッチーにしてみれば夢のある設定だったに違いない。

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