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ドラマ『東京サラダボウル』が描く外国人居住者と日本人の間の線

2025.2.11

#MOVIE

©NHK

本物のネオン管で作られたロゴを活かした印象的なメインビジュアルと、主演・奈緒のイメージを刷新した緑髪もあり、放送開始前からドラマ好きの間では話題となっていたドラマ『東京サラダボウル』(NHK総合)。

ギャラクシー賞や東京ドラマアウォードにも輝いた『燕は戻ってこない』『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』『宙わたる教室』に続く、NHK総合の夜10時台の連続ドラマ枠「ドラマ10」の最新作ということで、その中身にも注目が集まったが、第5話までを終えて、本作が扱うテーマの切実さと内容の面白さは多くの視聴者が認めるところだろう。

奈緒と松田龍平の凸凹コンビも魅力的な本作の第1話~第5話について、ドラマ・映画とジャンルを横断して執筆するライター・藤原奈緒がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

鴻田麻里(奈緒)と有木野了(松田龍平)の間の線

有木野了(松田龍平)と鴻田麻里(奈緒)©NHK
有木野了(松田龍平)と鴻田麻里(奈緒)©NHK

「今ここで、私たちの間に線引きしないで」
第1話において、奈緒演じる東新宿署国際捜査係の警察官・鴻田麻里は言った。それは松田龍平演じる警視庁通訳センターの中国語通訳人・有木野了に対して放った言葉だが、同時に彼女自身のスタンスを示しているような気がした。目の前にいる人と自分の間に線を引かない。警察官である自身と、通訳人である有木野。事件に巻き込まれる人たちだけでなく、彼女と親しいご近所さんや訪れる料理屋の店員を含む外国人居住者の人々と、日本人である自分。

「お父さん」ことワンジェンビン(張翰)©NHK
「お父さん」ことワンジェンビン(張翰)©NHK

第4話で「不法滞在者じゃない。その人たちも、一人ひとりの人間です」と言う彼女は、真っ直ぐに「お父さん」ことワンジェンビン(張翰)と向き合い、彼の心を動かした。そして、そんな主人公・鴻田麻里の存在は、まるで第1話冒頭で転がり落ちてきたレタスそのもののように、私たち視聴者の心に飛び込んできて、そのまま離れない。

多文化が共存する「サラダボウル」東京を描いたドラマ

歌舞伎町の人々と親しげな鴻田麻里(奈緒)と距離を取る有木野了(松田龍平)©NHK
歌舞伎町の人々と親しげな鴻田麻里(奈緒)と距離を取る有木野了(松田龍平)©NHK

NHKドラマ10で放送中の『東京サラダボウル』は、複数回ドラマ化もされた傑作漫画『クロサギ』(小学館)を描いた黒丸による漫画『東京サラダボウル―国際捜査事件簿―』(講談社)を原作に、映画『サバカンSABAKAN』、Netflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』、そして現在放送中のドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)などの金沢知樹が脚本を手掛けた作品である。困っている人を放っておけず、見落とされがちな小さな事件と真っ直ぐに向き合う鴻田麻里と有木野了のコンビが、日本社会からこぼれ落ちそうな人生を拾っていく。

緑色の髪が印象的な奈緒は、その柔らかい笑顔と弾むような声色で、誰に対しても平等で、いつもあっけらかんと心を開いている鴻田麻里という役柄を好演し、誰もが好きにならずにはいられない魅力を振りまいている。対して、最近ではNetflixドラマ『阿修羅のごとく』の勝又役の好演も光った松田龍平は、悲しい過去を背負いつつ、鴻田に影響されてゆっくりと本来の自分を取り戻していく有木野の姿を、滲み出る優しさと誠実さとともに体現する。

ベトナム語の通訳人・今井もみじ(武田玲奈)©NHK
ベトナム語の通訳人・今井もみじ(武田玲奈)©NHK

「東京都のさ、外国人居住者の割合って知ってる? 4.8%。パーセンテージだと、たったそれだけ。でも、人数で言うと68万人だよ。それだけの人生が確かにあるんだよ」という第1話の鴻田の台詞が、東京の今を、そして第5話のベトナム語の通訳人・今井もみじ(武田玲奈)の台詞が、変わりゆくこれからの日本の展望を示すように、テレビドラマにおいても、多文化が共存する「サラダボウル」となっている都市・東京を描いたドラマ、あるいは外国人居住者と日本人の関係性を描いたドラマは最近、増えている。2024年放送だけでも、新宿・歌舞伎町を舞台にした『新宿野戦病院』(フジテレビ系)や新宿の定時制高校を舞台にした『宙わたる教室』(NHK総合)。そして、本作第2話にもスリランカ料理店の店員役で出演したオミラ・シャクティがスリランカ人の「クマさん」ことクマラ役を好演した2023年放送ドラマ『やさしい猫』(NHK総合)も外国人居住者と日本人の関係性を描いた優れたドラマだった。

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