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誰の足元にも開く「穴」に落ちないように

第6話では、礼子の元上司であり独身でバリキャリを貫く江崎陽子(片岡礼子)が、第7話では、詩穂の友人である坂上知美(田中美佐子)の娘であり独身で仕事に邁進するキャリアウーマン・里美(美村里江)が登場し、彼女たちの心にある、ままならない感情が描かれた。独身を貫き、仕事に邁進することを決めたのが自分であったとしても、会社や親から結婚・出産の圧力を受け続けるのは辛いものだ。自分と近い年齢の女性が結婚・出産しているのを見ると、勝手にプレッシャーを感じてしまう人もいるだろう。作中でも、陽子は良き後輩だった礼子に対して結婚・出産後に距離を感じてしまい、里美が出会った当初は詩穂を拒絶してしまう様子が描かれていた。
違う人生のフェーズにいる人に対しては、「あなたは私と違う」と線を引く方が簡単だ。自分の心も守れる。でも、本当にそれだけで良いのか。結婚をしていなくても、子育てをしていなくても、自分の生活が上手くこなせなくなる可能性は誰にでもある。里美が、母・知美の認知症による介護の必要に迫られ、働き方を変えなければならなくなったように、「穴」は誰の足元にも開くのだ。いざという時に手を取り合えるように、いつでも手が伸ばせるように、他者との間に線を引くのをやめる。『対岸の家事』は、「穴」に落ちなくても済むように導こうとしてくれるドラマだ。