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1人の悩める人間としてのスーパーマン
実際に鑑賞してみると、本作のスーパーマンは決してただの「超人」ではなく、悩み、迷い、痛みを抱える、1人の悩める「人間」としてスクリーンに立っていた。
本作『スーパーマン』において、主人公スーパーマンは「アウトサイダー」として描かれている。彼は地球外からやって来た「難民 / 移民」として位置づけられ、そんな移民である彼が国を代表して正義を遂行することに対し、国民からは強い非難が寄せられている。 実は、スーパーマンを地球外の惑星からの「移民」として描くアプローチ自体は決して新しいものではない。ユダヤ系の作家たちによって創造されたスーパーマンは、その「カル=エル」という本名に象徴されるように、過去の作品でもしばしば「ユダヤ系アメリカ人」のメタファーとされてきた。しかし本作ではより「移民」としての出自に苦しみ、悩む1人の「人間」としてのスーパーマン像が、これまで以上に強調されている。

とりわけ印象的なのは、恋人である記者ロイス・レインの取材に応じたスーパーマンが、自身の正義のあり方を批判され、感情を露わにして怒りをぶつけるシーンだ。これまで理想化されてきたスーパーマンが、内面に葛藤と感情を抱えた「人間」として描かれるこの姿勢には、まさに「人間的なヒーロー」を描き続けてきたジェームズ・ガン監督らしさが色濃く現れている。
