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ジェームズ・ガンが描いてきた「負け犬ヒーロー」たち
ジェームズ・ガン監督が一貫して描いてきたのは、自らを「人生の落伍者」と呼ぶようなヒーローたちの姿だ。
彼がキャリア初期に脚本を手がけた『MISII メン・イン・スパイダー2』では、「ジャスティス・リーグ」や「アベンジャーズ」のようなヒーローチームものの形式を取りながら、世間からまったく人気がないヒーローたちが共闘し、かすかな活躍を見せる様子が描かれた。また、監督・脚本を務めた『スーパー!』はバットマンのような自警ヒーローを批評的に描いたブラックコメディだった。大ヒットとなった『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』3部作でも、世間的に無名だったコミックのキャラクターが集結し、それぞれが心に傷や後悔を抱えながら、銀河を救うヒーローとしての役割を果たしていく姿が描かれる。本作と同じく、DCコミックスを原作とした『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』も、罪を犯し刑務所に収監されていた者たちが、チームを半ば強制的に結成させられ、異色のヒーローとして任務にあたる物語だ。
ジェームズ・ガン監督の作品には一貫して、「負け犬」たちに対する温かい視線が流れている(実際、監督作では「loser / 負け犬」というセリフが頻出する)。そして彼らが心の傷をささやかに共有し、ヒーローとして活躍する様子を愛情深く描いてきた。 その一方で、ジェームズ・ガンが悪役として描くのはデビュー作『トロメオ&ジュリエット』から一貫して、富や権力、あるいは超人的な能力を持ち、自らを「神」だと信じて疑わない存在である。彼が脚本を務めた『ブライトバーン/恐怖の拡散者』は、「もしスーパーマンが悪の心を持っていたら?」という問いを軸に、超人的な力をもって暴力と殺戮を振るう少年を描いたホラー作品となっている。
ジェームズ・ガンのこれまでのフィルモグラフィーにおいて、スーパーマンのような超人的かつ理想化されたヒーロー像は、むしろ「悪役」として描かれてきた。だからこそ、そんなジェームズ・ガン監督がどのようにスーパーマンを描くのか、注目が集まっている。
