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「バーチャルワールドが豊かになれば、リアルワールドがどれだけ縮小しても、我々の豊かさが減ることはない」(隈)
平野:なるほど。AIによって加速していくクリエイティビティが技術を発展させていくと同時に、今の世界は様々な環境危機にも直面しています。エコロジーの問題に対して、AIによって加速されたクリエイティビティはどう寄与していくと思いますか。

隈:生成AIは、エネルギーの問題などを含んだ質問を投げかけても、ちゃんと答えてくれるわけです。それは今までは別のエンジニアに委託しないといけないものだった。もはやAIが即座に回答を出してくれるから、最適解をよりスピーディーに探しやすくなったと言えると思う。もう一つ僕が感じているのは、実際にものを作らないでいいということ。
仮想空間を構築していく能力がAIにあるということは、バーチャル空間あるいは思考の中で解決できることが増えるということ。それによって、現実世界の負荷を減らして、実際の環境的負荷を減らすことができるはずです。「バーチャルワールドだけで起きることに何のメリットがあるのか」というのがこれまでの一般的な見解でしたが、全く逆だと思っていて。
バーチャルワールドがどんどん豊かになっていけば、リアルワールドがどれだけ縮小しても、我々の豊かさが減ることはない。むしろそこに新しい種類の豊かさを見つけられるはずなんです。

平野:SEKISUI HOUSE – KUMA LABのテーマは、デジタルテクノロジーを使った新しい住まいの在り方、新しいライフスタイル探求ですが、今回のスタジオも含めて、隈さんは今後、AIを始めとするデジタルテクノロジーがどのように我々の生活の仕方、住まいの在り方を変えることができると思うか、ご意見をお聞かせください。
隈:これまでの住まいの定義は、「家」という物理的に完結した存在だけを指すものでした。しかし、人間という生き物を考えると、家だけが住まいなのではなく、それを取り囲むもの全ての情報も含めて住まいと言えるはずで、それを実感できる時代になった。昔は、そう言われても「住まいは屋根のある居住空間」だよなという意識が強かったけど、今はトータルでの情報環境が住まいだという実感が多くの人にあると思う。だから、これからは都市作りみたいな家作りをしていかないといけない。
SEKISUI HOUSE – KUMA LABの使命があるとしたら、そこだと思います。例えば積水ハウスさんが進めている、家の中の行動データから、病気や体の不調を早めに検知する仕組みは、デジタルな力を利用して「家」を拡張するということですよね。物理的な空間という制約を超えた住まいの在り方を実現しようとしてるわけで、そういう研究も、KUMA LABが取り組んでいる研究とすごく深い関係にあるような気がしますね。
KUMA LAB×積水ハウス『EXCESS』ー過剰性の時代に建築はAIと何ができる?ー

2025年3月13日(木)〜23日(日)
東急プラザ原宿「ハラカド」 4Fハラッパ
『Tokyo Creative Salon 2025』特設会場内
入場無料
積水ハウスと東京大学・隈研吾特別教授による「KUMA LAB」発足から5年
大量の情報と物質ーー過剰性により分断が加速するこの時代に、建築は何ができるのか?
外国人留学生を含めた24名の学生が生成AIを駆使し、「過剰性のニワ」をテーマにプロジェクト展を開催
Creative Talk:蓮沼執太×平野利樹

開催日時:2025年3月15日 14:00-15:00
開催場所:原宿「ハラカド」4F特設ステージ
参加費:無料(※イベント当日12:00より、ハラカド4F会場にて先着30席程度、整理券を配布いたします)
ゲスト:蓮沼執太、平野利樹(SEKISUI HOUSE – KUMA LABディレクター、東京大学特任講師)
司会:セレイナ・アン、タカノシンヤ(J-WAVE「GRAND MARQUEE」ナビゲーター)
日々、膨大な情報があふれ、AIの台頭でさらにその過剰性が加速する現代。アーティスト、クリエイターとして活躍する人々は、AIが生み出す情報とどう向き合っているのか。建築という領域はどのように応答していくのか。ゲストにSEKISUI HOUSE – KUMA LABディレクターで、東京大学特任講師の平野利樹と、音楽家・蓮沼執太を迎えて、クリエイティビティが生み出す、より良い未来のつくり方について考えていく。司会として、J-WAVE「GRAND MARQUEE」から番組ナビゲーターのセレイナ・アン、タカノシンヤが登場して会場を盛り上げる。
オフィシャルサイト
https://www.sekisuihouse.co.jp/kumalab_excess/