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駒田早代が貫く三味線文化の守り方。インスタでレッチリを弾く理由

2025.7.14

#MUSIC

三味線への情熱とマイナーな習い事へのコンプレックスを抱えた学生時代

ー駒田さんの経歴にお話を戻すと、高校2年生で津軽三味線日本一決定戦のA級女性の部に輝き、東京藝術大学にも一発合格されています。最初は三味線への憧れや熱意から始まった趣味という側面もあったようですが、これまでに挫折しそうになったことや、表現に行き詰まった経験はありますか?

駒田:私の地元の三重県は周りに三味線をやっている人があんまりいなくて、同年代の仲間もなかなかできなかったんです。全国大会ではみんな三味線を弾いてるけど、友達って感じじゃなくて。むしろライバルみたいで楽屋の雰囲気も常にピリピリしてました。だから三味線仲間っていう存在がいなくて、年に一度の大会に向けてモチベーションを保つのが結構大変だった。いつも悔しさが原動力だったように思います。

それでも、救いになったのは7歳の頃から始めた演奏活動。近所の高齢者施設で演奏して、「上手だね」「いいね」って言われるのがすごく嬉しかったんです。「次呼ばれたら新しい曲も演奏できるようになりたい」って思えたことがやる気につながってましたね。

ー三味線との関係は、孤独なものだったんですね。でも、子どもの頃って、友達と好きなものを共有したい年頃だと思うんです。はやりのキャラクターがあしらわれた文房具とか。でも、駒田さんのやられていたことは周りと分かち合えるものではなかった。もどかしい気持ちにならなかったんですか?

駒田:そうですね。大人になった今でこそ、「自分にしかできない」という使命感や誇りを持てるようになりましたが、子どもの頃は、やっぱり周りと違うことをしているのに気遅れて恥ずかしく感じる時期もありました。みんながピアノやバイオリンなどの西洋音楽をやっている中で、自分は昔からある古い楽器をやっていることにコンプレックスを持っていたんです。スポーツをしている方がかっこいいと思ったり、周囲の共感を得られなかったり、好きなことを友達と共有することは諦めていました。

ー相反する感情のように聞こえますが、コンプレックスと「三味線が好き」っていう気持ちは自分の中で共存する感情だったんですか?

駒田:共存してましたね。周りと共有できないと感じたときに、「じゃあもう無理に分かってもらおうとしなくていいや」と思って、自然と割り切るようになったんです。別に隠していたわけじゃないけど、学校で三味線のことを自分から話すこともなかったです。

学校の全校集会で入賞した人がステージで表彰される謎の時間があったじゃないですか? あれがすごく苦手で。部活だったら大体表彰されるけど、私の三味線はそうではないので、自己申告もせず黙ってました。自分で言わない限り学校も何もしてこないし、それがちょうどよかったんです。だから、三味線に関しては完全にプライベートなものとして割り切って、学校生活とは分けて考えていました。

ーそんなプライベートなものとして割り切っていた三味線を「仕事」として意識するようになったのはいつからなんですか?

駒田:もちろん三味線はずっと好きで続けていたけど、もともとは看護師や管理栄養士を目指していて、進路としては現実的な職業を考えていたんです。高校2年生になって進路を本格的に決めるタイミングで、看護学部や栄養学部を中心に志望校を選んで、進路希望調査を提出したんですが、三者面談のときに先生から、「あなたは(三味線で)日本一を取っているのに、それで本当にいいの?」って言われて。「本当にやりたいことを4年間学ぶ場所が大学なんだよ」という言葉が妙に刺さって、「私の進みたい道ってこっちじゃなかったかも」と思い始めたんです。

負けず嫌いな性格なので、それからは迷いなく「どうせ行くなら一番のところに行きたい」と、ほとんど何も知らないまま東京藝術大学を志望するようになりました。今思えば、現役で合格できなかったら三味線は続けていなかったかもしれません。大学合格後は、迷いなくプロを意識するようになりました。

駒田(母):周囲に同じ境遇の人も少なかったですし、受験の情報も少なかったので、ある意味、知らなかったからできたかもしれないなって思います。難しさを知っていれば身構えてしまったかもしれないけど、考えすぎる前にやってみたことがよかったのかもしれません。

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