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生身でいないと、「仲良くなれる人とも仲良くなれない」
―普段の人と人のコミュニケーションにおいても、相手が自分のことを本音でしゃべってくれたら、こっちも本音でしゃべりたくなるじゃないですか。それと同じような感覚で、この1年のSATOHは音楽ができていたんじゃないですか?
Linna Figg:そうかもですね。コンビニの店員さんに挨拶するときの声の出し方とか、ありません? もしくは業者の人から電話かかってきたときの「はい、もしもし」みたいな。とりあえず伝達だけできていればOKです、みたいなやつ。そうやって話してる感じが嫌なんですよね。すごく可愛らしく、ナイスで、礼儀正しく、社会の常識もわきまえてる感じの言葉遣いをして、一本ラインを引いて「ここから先には入ってこないでください」みたいな感じ。
―そうやって線を引かずに、お互いに踏み込みあえる音やアティチュードをチョイスした1年だった、というふうにも言えますか。
Linna Figg:そう。WWW Xでライブをやったときはまだ明確に見えてなくて、もうちょっとショーっぽい見せ方をしていたんです。そのときのマインド的には、お客さんはお金払って観に来てくれているからちゃんと満足して帰ってもらえるように、しっかりクオリティの高いものを観てもらおうという気持ちで、真剣にMCとかも考えていたんですけど、それだと俺も「隠してる」じゃないですか。お客さんも、隠してる人には隠しちゃうし、それだと観るだけになっちゃうから。俺、WWWでバイトしてたんですけど、店長に「今日はロックスターだったね。でもそれは本当にお前なのか?」みたいなことを言われて。そこからMCとかを考えることはやめました。

―ロックスターを演じ切ったようなライブも、それはそれでかっこいいけれど、それはSATOHがやるべきものではないと思ったということですよね。
Linna Figg:訓練を重ねて、毎回同じことをやって、というのもプロとしてかっこいいんですけど、自分は違うかなって。俺、高校生のとき、ディズニーランドもちょっと苦手だったんですよ。最近は楽しめるようになったけど。みんなディズニーランドを楽しむ人として行くし、ディズニーの人たちも「ディズニーフェイス」じゃないですか。でもミッキーも、本当はイラついてる日があるかもしれない。ライブでは、そういうものが見えた方が楽しいし、「予定通りの楽しみ方をして、みんな同じ顔をして帰っていく」みたいなことはやめにしたいなと思ったんです。

―前に「音楽をやっているのは、世界中で仲間を探してる感覚」ということを話してくれたけど、そうやって皮を被ったキャラではなく「自分」としてステージに出ていかないと、仲間も探せないし。
Linna Figg:そう、そうじゃないと仲良くなれる人とも仲良くなれないなって。俺が生身でいたら仲良くなれたのに、俺が膜を張っちゃっていたら、その機会がなくなるじゃないですか。ライブって、マジでそうだなと思って。
―Kyazmさんは、Linnaさんのこの話を聞いてどんなことを考えますか?
Kyazm:今の話、面白かったなって(笑)。常に(Linnaに対して)いいなと思っているのは言葉かも。言ってることいいなって、大体思ってる。ライブに関しては、さっきも言ったように俺は今年、楽器と向き合っていたので、細かいことを考えていた方が多いですね。でも全体の質感については、今Linnaが言ってたことがしっくりきます。
―2人がそれぞれの役割を果たして、Kyazmさんがプロフェショナルに徹底して音をまとめてくれるからこそ、SATOHのステージが成り立ってるんですね。
Linna Figg:それは本当に間違いないです。俺だけだったら、とんちんかんなライブして終わってそう(笑)。