INDEX
落ち込んだときに聴いてもらえたら、幸せ
─楽曲の話に戻ると、“祝福”はどういうきっかけでできた曲なんですか?
さらさ:去年一昨年と、身内や愛犬が亡くなったり、恋人と別れたりすることが続いたんです。もちろん悲しみは感じるけど、生きるってそういうことだし、悲しみの中でも幸福を感じたり、神秘的な色の空を見ると、いつもより感動して意味を感じちゃって、それを見逃したくないと思ったりするような感覚がテーマでした。
自分のワンマンライブのときに雨が降ると、来てくださった人に対して「祝福の雨ですね」ってよく言うんです。なので「祝福」って私には身近な言葉で、日常的な別れや誰かの死をその言葉に紐づけることは、自分にとってすごくしっくりきます。

─人生の中でのさまざまな別れの感覚が含まれているんですね。
さらさ:<私たちの死をここで許して>という歌詞を書きましたけど、恋人との別れって、目の前からいなくなるという意味で小さな死みたいなものだし、身近な人が亡くなると、なんでこんなに辛いのかなって不思議なんですけど、それでいいんだと思います。人生にいつか終わりが来ると思うと、私は救われるんです。いくら失敗しても、悲しいことがあっても、絶対に終わると思えば大丈夫だなって気負わずにいられます。
─この曲は、一曲の中で「僕」「私」「私たち」と主語が移り変わりますよね。さらささんの歌は全体にエゴみたいなものの存在が色濃くないと感じるのですが、ご自身の中で、歌において「私」の存在って、どういう位置づけですか。
さらさ:自分を救って、許して、受容してくれる、もう1人の自分や大きな存在のような感覚で曲を書いていることが多くて。本当に本当の「自分」の視点で曲を書くことは少ないですね。そういう意味では、主語や視点は多面的なのかもしれないです。

─悲しみや痛みって、乗り越えたり、忘れたり、なくした方がいいものと捉えられることが多いと思うんですけど、「ブルージーに生きろ」という言葉を掲げているように、さらささんの歌は悲しみや痛みを、ただそこにあるものとして認めようとする感覚があると感じるのですが、どのように培われたのですか?
さらさ:振り返ると、苦しくて先が見えなかった時期に手を差し伸べてくれる人がいて人生が変わったし、辛いときに考えていたことが、今の自分の思想を作ってくれていると感じて。ハワイの先住民族や、太極図のように、ネガティブとポジティブ、両方同じだけの質量があるから、バランスが取れているという考え方にも共感します。

さらさ:ネガティブなことを忘れたり考えないようにした方がいいと言う人の方が、ネガティブなことを重大に捉えすぎている可能性があるかもしれないですよね。誰にでも普通にあるものだから、そんなに気負わなくてもいいと曲の中で感じてもらえたらと思うし、自分でも忘れないように曲にしているところがあります。
─“予感”の中に、<この道は続く 誰にでも起こる>という歌詞がありますけど、このアルバムを通して聴いていて、「今私が特別に傷ついている」ことについてではなくて、「みんな当たり前に傷ついてる」ことが前提になっていると感じました。
さらさ:うん、みんな傷ついていますよね。私の曲は元気なときには、思い出してもらわなくてもよくて、落ち込んだ時に聴いてもらえたら、幸せだなと思います。