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第5話で一平が慎吾ママの決め台詞を発した意味

第1話では子育ての難しさ、第2話では同性愛の結婚の難しさ、第3話では不登校の難しさ、第4話では「こども食堂」実現の難しさ、そして第5話では保育園の運営の難しさが描かれてきた。いずれも、ニュースで取り上げられるような社会問題であるが、一平にとっては共に暮す「家族」が関わる極めて個人的な問題でもある。一平が目指す区議会議員という仕事は、そうした個人的な問題を議題とする場だ。ドラマには、個人的な問題を説教臭くなく視聴者に届ける力を持つ。身近にいる人であっても、家族や友人など普段から関係性を築いている相手でなければ、その問題を知り、自分事として考える機会はなかなか無いだろう。そういった点においても、多くの人が認知し、親近感のわく香取慎吾という俳優が本作の主人公を演じることに意味がある。
また、これまでの第5話までで、第1話~第3話と第5話は政池が脚本を担当したが、第4話は蛭田が担当した。第4話では、娘・ひまりの生理が始まった悩みを、家族とは言え異性である家族3人に打ち明けることの難しさが描かれた。その点において、蛭田が脚本を担当することに妥当性があり、ひまりを演じる増田梨沙と、ひまりが悩みを打ち明けた今永都を演じる冨永愛の好演もあって、前半戦の中でも最も胸を打つ回となった。

第5話では、フジテレビのバラエティ番組『サタ☆スマ』(1998年~2002年)で生まれた香取慎吾の名物キャラクター「慎吾ママ」の決め台詞「おっはー」を、一平自ら、保育園の園児に対して呼びかけるシーンもあった。一平ではない香取慎吾自身が「おっはー」をその年の流行語になるまで流行らせた2000年から25年が経過していることを考えると、園児たちの「おっはーって、なに~?」という反応にも納得感がある(慎吾ママは2021年からEテレで放送されている『ワルイコあつまれ』にも登場するが、今どきはテレビを観ない子どもも多い)。しかし、母親が不在の家庭に入り込んだ一平に、「慎吾”ママ”」というキャラクターを想起させる台詞を語らせたのは、偶然の一致だろうか。