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寺尾紗穂インタビュー 悲しみに気づける社会であってほしい

2025.4.24

#OTHER

「孤立」は重要な社会問題

─寺尾さんは、10年以上前から『りんりんふぇすを開催したり、近年は誰かと語ったり、話を聞くための場として『uchiake』(※)という試みを行なっています。人と人がつながる場をつくることに関心を持ってこられたのはなぜですか?

寺尾:やっぱり、孤立の問題って重要だと思うんです。取材させてもらったことがある元原発労働者のおじさんや、山谷で暮らすおじさんには、家族とのつながりが切れている人も多くて。知り合いの、体調を崩してしまった音楽ライターさんも同じくそうだったんですけど、65歳未満だと、特定疾病以外は介護保険の対象外なので、お金を払わないと何のサービスも受けられないんです。お金も頼れる先もない人は、完全にセーフティネットからこぼれ落ちてしまいます。

※少人数限定で開催される、不定期開催の語り、聞き合う会。Podcast番組として、レターを読む形でも配信されている。

─生活が立ち行かなくなってしまいますよね……。

寺尾:「孤独を飼い慣らせるのが大人」というような言い方がありますけど、飼い慣らせる程度の孤独は、「孤立」ではないんです。孤立してしまっている人に「自分で乗り越えろ」というのは、ちょっと見当違いな話だと思います。孤立しないためには最低限、どうやって人とつながっていくのかを考えることが大事。だから、「誰であっても、どんなことであっても、話を聞くよ、困ったことをみんなで解決しよう」と受け入れてくれる場所やシステムが必要です。だからこそ、外からみたとき誰でも入れそうな場所が大事で、ここのように、商売をしてるのかよくわからないけど、人が出入りしててちょっと気になるという場所があることが大事な気がします。

─「よくわからない」というところに含まれる、混沌としたぐちゃっとした感じが大事なのかなと、伺っていて感じました。

寺尾:そうですね。福祉先進国では、包括支援センター(※)のような場所が、それこそ些細な相談まであらゆる心配や困りごとに対してウェルカムの体制を取っている。年齢で区切ったりしない。日本はまだ途上ですね。日本の包括支援センターも、もうちょっと発展して、誰でもOKの場所になるといいですよね。あと、内気な人にとっては出かけていくってハードルが高い場合もあると思うんです。だから福祉を考えるときに、居場所になり得る場があっても、そこにも出てこられない人がいることは、見過ごされがちだけど、大事な視点です。窓口として、ライン相談をできる場所などはもっと増えてもいいのかなと感じています。

※高齢者や障害のある方、子育て中の人など、地域で暮らす人々の生活を支える総合相談窓口。人口2~3万人の日常生活圏域に1箇所程度設置されている。

―誰でも出て来やすい場所があるといいですね。

寺尾:地域の祭りは結構いいって聞きます。

─祭りですか。

寺尾:「祭りをやるから来ませんか」とか「人手が足りないからちょっと手伝ってもらえませんか」とか「お餅を配りますから」というのは、みんなを巻き込めるパワーがあるんですよね。

─もしかしたら、ちょっとしたことだったとしても、頼ってもらえたり、できることがあるという喜びを感じられる場合があるかもしれないですね。

寺尾:うんうん、そうなんだと思います。

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