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ノラ・ジョーンズにとっての「作品」と「ライブ」
―その高い声も含めて、『Visions』は特殊なプロセスで制作されているし、あなたの声もいくつも重なっているので、ライブでやるのが難しい曲もある気がします。ライブはどうなりそうですか?
ノラ:ライブではシンガーが二人いるから、ハーモニーを手伝ってもらえるし、そこは心配していません。でも私は、いい曲であれば、レコーディングとまったく同じアレンジじゃなくても良く聴こえると思っています。例えば『Little Broken Hearts』は特有なサウンドのレコーディングだったから、あのアルバムの曲をライブでやるときは、レコーディングとは違う方法で演奏してきました。けど、素晴らしい曲だから、毎回違うアレンジでやるたびに、また別の生命が宿ってくれる。長年やっている中で、そう学びました。だから、きっと素晴らしいライブになると思います。すごく楽しみにしています。
―2022年のあなたの来日公演を観に行きました。ライブではバンドのメンバー全員がすごく自由な演奏をしていて、曲の形がどんどん変わっていきました。一方であなたのアルバムはすごく緻密に作りこまれている印象もあるので、そのギャップにもライブを観るたびに驚きます。あなたの音楽にとって「作品」と「ライブ」の違いをもう少し聞かせてもらえますか?
ノラ:レコーディングでは、自分が作りたいように音を作れる。と同時に、私は「その瞬間の感覚」みたいなものを捉えたいと思っています。でも、だいたいの場合は、一番最初にその曲をプレイしたときに出来上がってしまいますね。
これまでに何曲か、ライブで先に演奏していた曲を、後からレコーディングしたことがあるけど、私がその曲に対して持っていた印象と、録れたものの印象が違うものになることが多くて、とても難しかったです。上手くいくのはたいてい、最初にその曲をプレイしたのがスタジオの中で、自分がやりたいように作っていけたときなんですね。
けど、楽曲は時間が経つにつれて一人歩きして、だんだん変わっていく。そういった変化に対しては、オープンなつもりです。ライブでもアルバムと同じようにプレイしていたら、私はきっと飽きちゃうと思う。だって、そのままを求めるんだったら、アルバムを聴いていればいいってことになるでしょ?
―おっしゃる通りです。ライブではあなた自身もかなり即興演奏しますよね。「即興」は重要なものですか?
ノラ:はい! 即興はとても楽しいし、音楽を生き生きとさせてくれると思います。だいたい、毎晩毎晩、常に曲を同じようにプレイするんだったら、私はツアーには出ないと思う(笑)。
ノラ・ジョーンズ『Visions』(CD)

2024年3月8日(金)発売
価格:2,860円(税込)
UCCQ-1197
https://norah-jones.lnk.to/Visions