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ノラ・ジョーンズ、音楽づくりを語る「その瞬間の感覚を捉えたい」

2024.5.10

#MUSIC

「歌ってみるまで、自分には高過ぎる音だと気づかなかった(笑)」

―すごく時間がなく、直すことも少なかったと考えると、ある意味では即興的だったということかもしれないですね。ここからはそれぞれの曲について教えてください。まずは“Running”から。

ノラ:あれはちょっと風変わりな曲ですね。まず「ダダダ〜ダダ〜ダ〜」というメロディを<I keep running I keep running>というアンサーハーモニーが追いかけるアイディアが思い浮かんで、最初はその部分しか出来ていなかったんです。それをとりあえずリオンと一緒に演奏してみたら、ドラムのグルーヴがものすごく良くて、つられてピアノもクールなサウンドになった。でも、そこから完成させるまでとても時間がかかりました。

それはコーラスの部分を変えたからで、元々ポップソングっぽく聴こえていたのが私にはあまり心地よくなかったんです。コーラスを少し変えて良くなったので、そこからパートごと取り除いていったら、まとまらなくなってまた元に戻したりして(笑)。そこからさらにハーモニーを付け足したりして、完成した感じですね。

―では“Swept Up in the Night”はどうでしょう?

ノラ:あの曲は、バンドとのレコーディング用にと思って書いた曲です。スタジオでリオンがタンバリンを叩き始めたんですね。それに合わせてウーリッツァーで作りました。後からバンドとレコーディングしたときには、タンバリンは入れなかったんですけど、すごくいいサウンドだったのでそのままにしました。特にドラムのグルーヴがとても良くて。ブライアン・ブレイド(Brian Blade)が叩いてくれたんだけど、彼がプレイすればどんなときもいいサウンドになるんです。

―“On My Way”もすごく面白いサウンドですよね。

ノラ:この曲はだいぶ前に家で書いて、夫(=ピート・レム Pete Remm)と完成させた曲ですね。最初にドラムマシーンで作ったから、レコーディングするときもいつもドラムマシーンを鳴らしていました。後から変えたり、付け足したりするだろうと思っていたけど。最終的にはハーモニーだらけの曲になってしまいましたね(笑)。

―ハーモニーの話が出ましたけど、『Visions』はあなたのボーカルの質感もこれまでのあなたのアルバムとは違う印象がありますが、どうですか?

ノラ:リオンが色々なテクニックを駆使してレコーディングしてくれていると思うので、彼に聞いた方がいいかもしれないですね(笑)。多くの曲は、とても小さなマイクを、私が手で持ってレコーディングしました。古いマイクだったけど、詳しくはわからないですね。私自身はそんなに深く考えてやったわけではないんです。

―例えば、“Staring At The Wall”、“I’m Awake”だと、一曲の中でも異なる質感や奥行きであなたの声が鳴っているんですよね。そういった声の工夫についてはどうですか?

ノラ:どんなときでも、私が歌を歌うときって、私は、ただ歌うんです。そして、「その歌の言葉と感情がどんな具合に組み合わされるのか」を見ているだけ。色々な試行錯誤に対しては、オープンな姿勢でいると思います。曲によっては、音域に合うようにキーを変えたり、私のボーカルを入れる前にテンポを速めたり遅くしたりという調整をすることはあります。場合によってはそういうことが一つの大事な要素だったりするから。

―リオンが作ったサウンドのような「ボーカルの質感や響き」はあなたの歌い方に影響を与えますか? というのも、質感が変われば、届けられる感情や温度が変わりますよね。

ノラ:そういうことはあるかもしれない。全てのことはあらゆることに影響及ぼすと思うから。ちなみに今作では、実際に歌ってみる前から、ボーカルハーモニーが頭の中に聴こえている状態で曲を書いていたんです。それで、このアルバムで私は、今までになく高い声で歌っています。あまりにも高い声で歌ったので、メイクセンスしないものもあったけど、正しいところに収めれば上手くいく。そうやって完成した感じですね。

―なぜ今までより高いところを歌おうと思ったのでしょう?

ノラ:高い音を歌おうと思っていたわけじゃなくて、頭の中で聴こえていたハーモニーが、実際に歌ってみたら高すぎたんですよ(笑)。出ないよ! 喉が痛いよ! って(笑)。でも、それが適切なハーモニーだったから。歌ってみるまで、自分には高過ぎる音を書いていたことに気がつかなかったんです。

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