INDEX
「長い糸のようなものを、一緒に動かしている」
―クレジットを見ると、ほとんど二人で作曲していますよね。一緒に作曲するプロセスがどのようなものだったか、もう少し聞かせてもらえますか?
ノラ:多くの曲では、リオンがドラム、私がピアノかギターを弾いて、構成を整えるところから始めました。ある程度の構成を作りながら、同時に歌うこともあったな。そうやって曲を作っていって、出来た曲をまた二人だけで演奏して、それをレコーディングしました。
―例えば『Begin Again』『Little Broken Hearts』『Day Breaks』でも、作曲のクレジットが共同になっている曲がありました。それらとはやり方は違うんですか?
ノラ:少し違うと思います。リオンと一緒に曲を書くのはかなり独特なものだから。一方で、誰と一緒に作るのもそれぞれがクリエイティブな作業だから、今回だけが特別ではなく、毎回違っているとも言えるかな。同じようなやり方だったら、毎回同じような感じの曲になると思うから。常に違っていると思います。
―いろいろな楽器を演奏して、たった二人だけで作るやり方は過去にもあったんですか?
ノラ:ジェフ・トゥイーディー(Jeff Tweedy)と一緒に作ったとき(『Begin Again』)は、彼がギター、私がピアノを弾いたり、二人ともギターを弾いたりして曲を書きました。デンジャー・マウス(Danger Mouse)と一緒に作ったとき(『Little Broken Hearts』)も色々な楽器を使ったな。彼がドラムを叩いて、私がピアノかキーボードを弾いたり、彼もギターやキーボードを弾いたりして、曲を編んでいってた。楽器は違うけれど、同じような感じで曲を作っていたと思います。
―こういう形で、少ない人たちでいろいろな楽器を奏でる作曲と、普段の自分の作曲では、出てくるものにどういった違いがあると思いますか?
ノラ:もちろん違います。他の人と一緒に作曲すると、違ったエネルギーのものになっていきますよね。例えば、彼らが、自分で浮かぶものとは違う傾向のコード進行に展開させていったりとか。全て説明できるものじゃないけど、全ての事柄が、あらゆるものに影響を与えると思います。
―あなたが持っていたアイディアから作った曲はどれですか?
ノラ:わりと多くの曲がそうですね。“Visions”“Queen Of The Sea”“I’m Awake”は、私が自宅で書いた曲をスタジオに持ち込んで、一緒にアレンジを考えました。“On My Way”とか“All This Time”は、私が持っていた古いボイスメモから作られた曲。最初のパートだけ私のアイディアで、それをアレンジし直したり、一緒に他のパートを考えたりしています。
一方、“Staring At The Wall”みたいに、最初からスタジオの中で一緒に書いたものもありました。リオンに「何か速いテンポのものをやろうよ」と言われて、彼がドラムを叩き始めたんだけど、私は「そんな速さでピアノを弾けない!」と言って(笑)、ギターでリフを弾き始めたのがこの曲です。“Alone With My Thoughts”はスタジオの中で一緒に書いたんだけど、そのときは歌詞がついてなかった。ボイスメモを探ったら以前書いた詩があったから、それを曲と合うように少しいじって完成させました。
―その場で出たアイディアが種になって、そこから育った曲はどれですか?
ノラ:“Alone With My Thoughts”“Staring At The Wall”“Swept Up In The Night”はそうですね。
―どこかのタイミングで出たひとつのアイディアがその曲を変えた、みたいな例はありますか?
ノラ:そうですね、何かいい例があるといいんだけど……。私たちがスタジオでやっている全てのことは、音楽に影響する。相互作用で変わっていくんですね。例えるなら、数分ごとに流れが変わっていく長い糸のようなものを、一緒に動かしている感じ。説明するのが難しいけど、全てがそういう感じで変わっていると思っています。同じ曲でも違う人と一緒に作っていたら、きっとまったく違う音楽、違うサウンドになっているはずです。
―ところで、なぜアイディアが夜中や寝る前に浮かんだのでしょうか?
ノラ:曲って、静かなときに出来上がると思うんです。でも、静かな瞬間ってなかなかないですよね。電話はかかってくるし、頭の中はいつも色々な事で忙しいし。だから、夜だったり、瞑想しているときや、お風呂にいるときに出来ることが多いんだと思います。