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「変わらない」日常の中の「変わりゆくもの」

11年ぶりに幕が開いた『最後から二番目の恋』。その「変わらなさ」に、胸をなでおろした視聴者も多かったはずだ。朝から賑やかな長倉家の食卓。真平が朝食をつくり、万理子がひたすら千明に愛を伝え、ひょんなことから千明vs和平の試合開始のゴングが鳴る。そうこうしている間に文句を垂れながら典子が現れ、最年少なのに誰よりも大人なえりなの「遅刻です」で、みんながバタバタと家を出る。第5話では、放浪癖のある典子の夫・広行(浅野和之)と元祖ギャル脚本家のハルカ先生(益若つばさ)も再登場。いよいよ役者が出揃った感もあるのではないだろうか。
しかし、『続・続』は「変わらない」日常の中にも、たしかに「変わりゆくもの」があることを描いている。千明は現在59歳。いまや定年後のセカンドライフを考える歳になった。年齢を重ねるごとに役職も上がり、己の権威性を鑑みながら部下と接しようとするものの、その配慮自体が「時代遅れ」に映ってしまうことに頭を悩ませている。かつて自分が憎んでいた上司と似たような素振りをしてしまうことにも葛藤する。自分が「新しいんだか古いんだか」「アップデートされてるんだかされてないんだか」「正しいんだか間違ってんだか」わからない。それがミドル・シニア世代の切実な本音だ。一方、63歳になった和平は、定年退職後に観光推進課の「指導監」という役職に就任。とはいえ、その実態は、課長になった元部下・田所(松尾諭)が起こした失敗を尻拭いするために頭を下げる日々だ。劇中の鎌倉市は、第2シーズンの『続』から登場した市長・伊佐山(柴田理恵)による市政が長く続いているが、街の景色はすっかり変わった。インバウンド需要が高まり、外国人観光客の姿も日常に溶け込んでいる。そんな時代に求められているのは、『続・続』から新たに登場した鎌倉観光協会の通訳バイト・律子(石田ひかり)のように語学が堪能な人材なのである。