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“吉野千明にならなかった女性”としての専業主婦・典子

ファンにとっては『最後から二番目の恋』シリーズの続きを待ちに待った11年間だったが、令和7年のいまだからこそ、本作の一つのテーマとして、より鮮明になったものもあった。それは、“吉野千明にならなかった女性の物語”だ。一昔前のドラマは、千明のように恋に仕事に奔走し自ら物語を引っ張る、王道ヒロインものが多かった。一方、『最後から二番目の恋』は13年前のシリーズ当初から、和平の妹で専業主婦の典子(飯島直子)を通して、“千明にならなかった女性の物語”も同時に描いてきた。そして、今回の『続・続』ではさらに、典子が内面に抱える複雑な気持ちが顕著になっていった。
そもそも『続・続』から本作を観た人の中には、典子のことを、育児を終えて自由気ままに過ごす専業主婦……だと思う人もいるだろう(あながち間違ってはいないのだが)。朝から颯爽と長倉家に突撃しては、下世話な話をして周囲の度肝を抜く典子だが、恋愛遍歴は意外にも少ない。それは、学生時代の教師だった広行(浅野和之)と結婚し、愛する夫と息子のため、一途に主婦業をやってきたからだ。けれど、大恋愛の熱も束の間。成人になった息子は独り立ちし、ロマンを追い求めた夫は家を出て、どこを彷徨っているかもわからない状態になってしまった。