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『サマソニ大阪』と『MUSIC LOVES ART』で可視化された熱量の差

2024.9.16

#ART

©SUMMER SONIC All Rights Reserved.
©SUMMER SONIC All Rights Reserved.

万博記念公園の歴史に応答した『サマソニ大阪』の完成度の高さ

いっぽう、今年初めて万博記念公園を会場に選んだ『サマソニ大阪』本体はとても刺激的だった。今年の『サマソニ大阪』は、4つの屋外ステージに加え、展示施設である「EXPO’70 パビリオン」の別館部分を利用して、クラブ寄りのプログラムを実施した。同館は1970年の『大阪万博』当時の出展施設であった鉄鋼館を利用した記念館で、『サマソニ大阪』来場者は万博関連資料が展示された本館を通り抜けて、ライブ会場である別館へと至る。つまり観客は、万博の歴史に触れた後で、音楽に没入するのだ。そしてたどり着いた別館では、壁面を覆う巨大な『太陽の塔』の黄金仮面がかれらを迎える!

PAS TASTA ©SUMMER SONIC All Rights Reserved. 

取材時間の関係で筆者はLicaxxxとPAS TASTAのパフォーマンスの一部しか見られなかったが、本当に最高のライブ体験だった。別館に展示された黄金の仮面は、万博開催時の『太陽の塔』に装着されていたオリジナルで、万博と万博記念公園の歴史を象徴する貴重な資料だ。それを見上げながら音楽の享楽に没入して踊り狂う経験は、かつて丹下健三がコンセプトを描き、テーマ展示ディレクターに就任した岡本太郎が破壊的にブラッシュアップした「お祭り広場」の祝祭的な交歓の記憶を鮮やかによみがえらせる。

Licaxxx ©SUMMER SONIC All Rights Reserved. 

「人類の進歩と調和」をうたった1970年の『大阪万博』は、敗戦から25年を経た日本が、文化的にも経済的にもいよいよ新しいフェーズに突入したことを印象づけるイベントとして記憶されている。もちろんそこには反対運動も批判もあったが(ゼロ次元、秋山祐徳太子ら前衛集団が多数参加した「万博破壊共闘派」など)、戦後日本の経済成長や民主主義への是も非もまるごと飲み込んで時代精神を後世に届けようとするパワーと信念があった。

そしてまた、言うまでもなく1970年の『大阪万博』には、アート×音楽×テクノロジーを架橋しようとする旺盛な実験精神もあったわけだが、ドローンを用いることで2020年代の拡張する「テクノロジー」のポテンシャルを強調しえたはずの『MUSIC LOVES ART』は、前述したようにそのコンテキストも掴み損ねているのが残念でならない。

開催期間中の会場風景。中央に太陽の塔を望む。1970年4月撮影。(originally posted to Flickr as Korean Pavilion

『MUSIC LOVES ART』の失調に対して、場が持つアウラやパトスに応答してみせた『サマソニ大阪』の感度の高さにこそ「アートと音楽」の実践はある。筆者が目撃したデジタルネイティブ(もはや死語?)なZ世代の若者たちが踊り狂う風景には、その歴史が連綿と引き継がれているという現前の体感があった。

PAS TASTA ©SUMMER SONIC All Rights Reserved.

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