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OGRE YOU ASSHOLE・出戸学からの質問。Mockyの音楽を形作るレコード、機材、本

メロウなサイケデリアで多くのフォロワーを生む現代屈指のライブバンド、OGRE YOU ASSHOLEのフロントマンでコンポーザー。2000年代USインディーとシンクロしたギターサウンドを経て、サイケデリックロック、クラウトロック等の要素を取り入れる。
出戸:好きなレコードを3枚教えてください。
Mocky:これは難しい質問だ(笑)。強いて挙げるなら、まずはスティーヴィー・ワンダーの『Music of My Mind』(1972年)。自分で多重録音を始めたときにすごく影響を受けたよ。
あとはマイルス・デイヴィスの『Round About Midnight』(1957年)。これは何千回も聴いたと思う。特にジョン・コルトレーンの音が素晴らしよね。最後の1枚は……コンピレーションでもいいかな(笑)。ジョルジ・ベンジョールやTrio Mocotóとかが入ってるブラジル音楽のコンピはやっぱり最高だね。
出戸:今回のアルバムでよく使ったマイク、マイクプリアンプなどの録音機材を教えてください。
Mocky:ほとんど1本のマイクだけで、Neumann(ノイマン)のオリジナルM7カプセルにSiemensのチューブを組み合わせたもの。これは昔、ベルリンで見つけたレアなやつで。この作品はプラグインを一切使ってなくて、AmpexのC440テープマシンに入れて、ビンテージのEcoplateリバーブを使ったよ。
出戸:おすすめの本を3冊教えてください。
Mocky:1冊目は『Temperament: How Music Became a Battleground for the Great Minds of Western Civilization』かな。アメリカの音楽評論家、ピアニスト、作家のスチュアート・イサコフが書いたもので、音階をどのように調整・調律するか、つまり音律の歴史をたどった本。
2冊目は『The Orientalist: Solving the Mystery of a Strange and Dangerous Life』。トム・ライスというジャーナリストによるレフ・ヌッシムバウム(※)の伝記的ノンフィクション。3冊目は『Elephant to Hollywood』。イギリスの俳優、マイケル・ケインの自伝だよ。
※レフ・ヌッシムバウムは、バクー(現アゼルバイジャンの首都)のユダヤ人家庭に生まれた作家。20世紀のふたつの世界大戦のさなかにヨーロッパを流浪しながら複数のペンネームを使い分けて活動、クルバン・サイード名義で発表したとされる恋愛小説『アリとニノ』(2001年、河出書房新社、松本みどり訳)などを残す