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山下敦弘『リンダ リンダ リンダ』は20年を経てなお色褪せない。名作を改めて解説

2025.8.22

#MOVIE

劇的なドラマはあらかじめ終わっている

そもそも、劇性は排されている。というか、「あらかじめ終わっている」のだ。

ことの成り行きは(あえて)明瞭に説明されてはいないが、どうやら5人組であったらしい女子高生バンドは、ギタリストが骨折し弾けなくなり、ボーカルはキレてケンカ別れし、離脱した。このふたりは序盤に登場し、主人公たちと接触もするのだが、そこは全くドラマティックに描かれない。軽くかすった程度。ギターの女の子はすまなそうに退場し、ボーカルの女の子は一触即発のスリルを期待させるものの結局、何事もなかったように物語から退く。

これはどういうことか。すべて「事後」なのである。ボーカルの女の子が抜けるというのは相当なことで、たぶんかなり激しい諍いがあったと想像できる。普通の素人バンドなら、ボーカルが抜けたら解散だろう。しかし残った3人は、オリジナルは無理でも、コピーならやれる、やりたい、やるべきだ、という感じで、予定通り、文化祭への出場から降りない。

恵(香椎由宇) / © 「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ

このあたり、映画ではっきりは描写されない「エピソード0」がおそらく最も感情の上がり下がりが劇的なはずだが、そういうことは一旦すべて「あらかじめ終わっている」体で『リンダ リンダ リンダ』は始まる。そう、台風一過なのだ。いや、晴れ晴れしているわけではないが、大変な嵐は過ぎ去ってしまった後の「日常」が見つめられている。ここがユニークな点だ。

ギタリスト不在のため、キーボードがギターを弾くことになる。ギター、ベース、ドラムスで3ピース。3人のうちの誰かが歌えばバンドはバンドとして成立するが、誰も歌いたくはない。去ってしまったボーカルの不在が浮き彫りになるから気が進まないのだろう。

望(関根史織) / © 「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ

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