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互いを成長させた心麦と松風の関係性の変化

物語が進むにつれ、謎と共に深まっていったのは、主人公・心麦と松風の関係性だ。一弁護士とクライアントの大学生という関係から始まった二人は、ときに「保護者と子ども」のように見えることもあったが、今ではすっかり肩を並べる立派なバディである。「世界はそれを成長って呼ぶんですよ」と松風がどこか得意げな顔をしていたように、ラストスパートにかけての心麦の成長が目覚ましい。
春生が娘に託した想いは、あまりに重すぎるものだ。父を殺した真犯人と東賀山事件の真相を探しにクジャクの潜むジャングルへと足を踏み入れた心麦は、思わぬ形で他人を巻き込み、自分の出生の秘密までも知ってしまう。わずかな希望であった春生との関係が血縁的には無かったと明らかになったとき、その宿命を手放すことも出来たはずだ。けれど、彼女は前に進む。そんな心麦の強さは、自身の父親の存在に目を背けながら生きてきた松風の心をも変えた。京子から、過去のことは忘れたらいいと言われた時も、「でもそれは無理なんです。私が林川歌であることは、なくせませんから」と真っすぐに返した心麦の姿にはグッとくるものがあった。