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神戸の地形を活かした、都市型ながらもリラクシングなフェス
「このフェスって、MELLOW CRUISEという“都市”に来た気持ちになるんですよ」
『KOBE MELLOW CRUISE』、通称『メロクル』に出演した、とあるアーティストが話していたエピソードだ。2022年から始まったまだ歴史の浅いフェスに向けられる賛辞としては、最大級のものだろう。

あらゆるイベントが乱立し、また新たなフェーズに入ってきた印象がある近年のフェス事情。中でも都市型フェスは、都会ならではの利便性や多様性を取り入れながら発展している一方で、個性を打ち出すことが難しい側面もあるように思う。
単なる大型イベントにとどまることなく、いかに独自の文化を育み、オリジナリティを確立するか。多くの都市型フェスが、音楽だけでなくアート、食、ファッション、テクノロジーなど多様な要素を取り入れることで、特色を生み出してきた。神戸で開催される『メロクル』もまた、そんな「都市としてのフェス」を体現するイベントのひとつとして個性を打ち出し、大きな支持を得ている。
たとえば、イベント名にもある、様々な文化を「クルージング」していくというコンセプトはこのフェスならではの特徴を言い表しているだろう。『メロクル』が開催されるメリケンパークは、港町である神戸を象徴するポートタワーの麓に位置する。六甲山をはじめとした豊かな自然と、洗練された港風情、異国情緒あふれる街並みによって長らく多様な外国文化を取り入れ、独自のスタイルを築いてきた神戸の街を代表するスポットだ。山に囲まれた街・神戸の地形に海からの風が吹き抜けることで、リラクシングな、都会にいながらも喧騒から少し離れた雰囲気が生まれている。

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関西圏のカルチャーが一挙に介する都市型フェス
『メロクル』の特徴は、クルージングする多彩な催しが神戸・関西圏のカルチャーを元に展開されている点。2025年も、神戸出身のtofubeats、大阪府出身のKvi Babaや清水翔太、lil soft tennis、swetty、京都出身のDaichi Yamamoto、和歌山県出身の7などのヒップホップを中心としたアーティストに加え、アパレル・雑貨やフードなども神戸や関西圏のショップが多く立ち並ぶ。つまり、立地やロケーションというハード面も、そこで展開されるステージやショップというソフト面も、ともに神戸 / 関西圏という土地性を最大限に活かしキュレーションされた「ここでしか体験できない」ものになっているのだ。この独自性こそが、『メロクル』が開始からわずか4年目で急速に支持を集めている要因だろう。



大型フェスながらどこかアットホームな雰囲気はアーティスト側にも伝わっているようで、皆「リラックスして遊びに訪れるような感覚」と口を揃えて言う。たとえばヒップホップのアーティストが多く出演するフェスと比較してみても、ヒリヒリした緊張感の中いかに「カマす」かが問われる『POP YOURS』とは対照的だ。メロクルは演者側もいかに楽しむかというムードが強く、ゆるやかなバイブスの中で、普段は見られないピースフルな側面を垣間見ることができる。


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ラインナップから見る、他のヒップホップフェスとの違い
では、ここからは2025年5月10日(土)と11日(日)に迫った今年の『メロクル』の見どころを紹介していこう。
まず注目すべきは、1日目と2日目で音楽性の傾向がやや異なる点。1日目はヒップホップを軸にしつつもポップスやR&B、さらにソウルミュージックといった領域までジャンルの広がりが見られる。対して2日目はよりヒップホップ色が濃い印象だ。

特に1日目には、betcover!!や柴田聡子といった新たな風を吹き込むであろうアーティストが出演。田我流はバンドセットで心地よいグルーヴを聴かせてくれるだろうし、lilbesh ramkoやswettyといったユース層に大きな人気を誇るアクトも揃っている。まさにかゆいところに手が届くラインナップで、これだけバラエティに富んだアーティストが一気に観られるのは貴重な機会だろう。
さらに2日目は、よくぞここまで集めたという今のヒップホップシーンを彩る豪華なラッパーがズラリ。GADOROやNovel Coreといった、日本武道館での単独公演をすでに実現しているアクトも名を連ねる。
中でも、ヘッドライナーは1日目がKvi Baba、2日目がTohjiという組み合わせに。もっか“Friends,Family&God”がヒットし、2025年の8月に日本武道館での単独ライブを控え乗りに乗っているKvi Babaと、先日初のアリーナ公演を熱狂的なリスナーとともに成功させたTohjiという贅沢な構成だ。
例年『メロクル』はSEASIDE STAGEとURBAN STAGEの2ステージで時間のかぶりなくライブが進行していくが、2025年はさらに屋内ステージも追加に。3つのステージを行き来しながらフェスを楽しめる。ヒップホップ系のフェスは1アーティストあたりの持ち時間が短いケースが多いが、同フェスは1人(組)あたり約30分間、ヘッドライナーは約50分間と、じっくりパフォーマンスを堪能できるのも特徴だ。
