メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

『近畿地方のある場所について』白石監督と原作者背筋に聞く、観る怖さと読む怖さ

2025.8.8

#MOVIE

映画版の影響を受けて、大きく加筆修正された文庫版

―ところで映画版では、背筋さんが「白石監督らしくしてください」とオーダーされた場面があったそうですね。

白石:主にオープニングで、オカルト雑誌の編集長の佐山が怪異に遭うシーンです。背筋さんからプレッシャーをかけられました(笑)。

背筋:思いを伝えたんです(笑)。

白石:当初は別のアイデアだったんですけど、「構成的に早すぎるんじゃないか」という意見もあって考え直していたときに、背筋さんから「白石監督ならではの、斜めから殴られるような感じにしてほしい」と。そのあとに完成版のアイデアをひらめきました。

―クライマックスも白石監督らしい展開になっていますよね。個人的には、過去の白石作品をいくつも思い出しました。

白石:原作が小説ならではの面白さなので、やっぱり映画版には映像的な興奮がないと満足してもらえないだろうと。同時に登場人物の気持ちを追求していった結果、自然とあの展開になりました。もともと私の映画は、だいたいクライマックスでは「見せる」ようにしているんです。見せないよりも、見せて面白いものにしたい。そこで、原作のとある要素を「見せる」方向性にしたらこうなりました。これなら他のホラー映画とも差別化できて、映画の勝算にもつながるだろうと。

―『文庫版 近畿地方のある場所について』についてもお伺いします。単行本とは異なる新しい物語になり、さらにドラマティック、かつ人間ドラマの要素も強くなった印象です。背筋さん自身が映画版の脚本に携わったことの影響はありましたか?

背筋:それはもう、すごく大きな影響を受けました。脚本や完成した映画を見せていただいたとき、「キャラクターに感情移入しながら物語を追いかけられると、こんなに別の魅力が生まれるんだ」と勉強になったんです。だから文庫版は、単行本そのままではなく、よりドラマティックにストーリーを描くものにしたかった。映像の文脈の作り方を踏襲しつつ、キャラクター性を持たせて、ストーリーを作ることから逃げずに書きたかったんです。フィクション性は増したので、結果的にモキュメンタリーからは遠ざかっていると思います。だけど、この作品を「実話です」って売り出すことはもうないだろうし。

―構成もかなり変わっていますよね。単行本から削除されているエピソードもあって。 

背筋:単行本の見せ場は真相が明らかになるところですが、文庫版はそこを見せ場にしていないんですよね。

白石:えっ、そうなんですね。

背筋:はい。真相は中盤くらいで明かしてしまって、そこからは登場人物たちが何を考えていたのか、なぜそうしたのかという話になっていく。自分が一番書きたかったことを終盤に持っていきました。単行本もひとつの正解だったと思いますが、今回は別の書き方に挑戦したかったんです。

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS