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君島大空が迎えた「ひとつの区切り」とは。『午後の反射光』からの6年を振り返って語る

2025.5.15

#MUSIC

「自分の外側」、他者との繋がりをエネルギーにした『no public sounds』

『no public sounds』リリース時のアーティスト写真

―次は『no public sounds』です。

君島:奇跡のアルバムだ。

―『午後の反射光』や『映帶する煙』は、ある意味、遺書みたいな念がこもった作品のような気がしますが、『no public sounds』はこれからも続いていくことが念頭にある作品のようにも感じます。

君島:言ってしまえば、『映帶する煙』ができたときにそう思えなかったんですよね。悔しさのほうが全然勝ってて。サウンドプロデュース的な面での達成はあったけど、圧倒的に見えてないもの、できなかったことが多すぎて全然ダメだった。

―総括をしにかかったがゆえに、自分への要求も相当高かったってことだと思いますけど。

君島:『午後の反射光』でやった方法、サウンドテクスチャーって未だにすごく好きで、何歳になってもできるし、それを『映帶する煙』で一度やりきったつもりだったんですけど、「やりきったって思ってんじゃねえ!」って自分にムカついてました(笑)。

―自分に厳しい(笑)。世の中的には『no public sounds』で君島さんの活動規模がもう一段変わった認識かと思いますが、本人的にどんな位置づけですか?

君島:ここからモードが変わっていて、「その場のノリで行ったれ!」っていうかなりチャラい気持ちで作ったアルバムですね。それはすごく大事なことですけど、楽な感じで作りました。単純にミックスが速くなったとか、自分の技術の向上を感じたし、楽しいまま制作は終わりました。

―この作品は、君島さん自身と作品の距離感や動機との関係性が以前のものとは違うような感触があります。

君島:そうですね。『no public sounds』は今まで歌ってきたことはあんまり言ってないんじゃないかな。わからないようにしているというより、単純に動機自体が違う曲が多い。あとこの辺りで「こういう曲できたんだけど」って共有できる友達に出会っているから陽の気がある作品だと思います。

ゆっきゅんとか、映画『暁闇』(2019年)の監督の阿部はりかさんとか、あとはトリオの2人(ベースの藤本ひかり、ドラムスの角崎夏彦)とか、参加してくれた友達のおかげスペシャル(笑)。合奏で録った曲は1曲もないし、ドラムも石若さんが2曲、トリオで2曲かな。

―リリース時、音楽の取り巻く状況を踏まえて、「なくなってしまった場所に克明な居場所を見つけようとする実験です」とコンセプトノートで発表していましたが、ストリーミングで音楽を聴くことが当たり前になった時代に、誰にも聴かれることのない歌への眼差し、「音楽の居場所」に対する君島さんの視点を感じて。君島さん自身に基づいていた音楽を作る「動機」が、そうやって自分の外側にあるものも増えていった。

君島:うん。

―これまでで一番、他者を受け入れているというか、聴き手が暮らしている現実や社会と繋がっている感覚があります。

君島:オープンだし、単純にポップだなって思います。でもあまり振り切った感じもしてなくて、自分の中では、このとき出会った友達と一緒にやったって意味で実験性が高いかもしれないです。

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