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音楽を通じて隠していた本音が溢れ出る
長崎市内のミッションスクールに通う高校生・トツ子は、古書店で働いている少女・きみと、隠れて音楽活動をしている少年・ルイと出会い、バンドを組むことになる。
メインキャラクター3人の共通点は「周りに『好きな気持ち』を隠している」こと。トツ子は表裏のない天真爛漫な女の子のようで、その場を取り繕うようなウソをついてしまったりする。きみは退学したことを家族に言えないままだし、ルイは母親の期待通りに医者の道に進むと言いつつも音楽を愛してやまないのだ。

そんな3人の本音(感情)が、音楽を通じて次第に溢れ出す様が本作の大きな魅力だ。たとえば、トツ子が古書店で一緒にバンドを組みたいという(彼女自身も唐突だと思ってしまう)提案をして、きみに心良く「やりたい」と言われた時の、驚きと嬉しさがいっぱいになったリアクションは、笑ってしまうほどにいじらしくてかわいい。そういう溢れる「好き」の感情は、何も隠さなくたっていい、「それでいい」と多くの人が思えるのではないか。