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井戸健人が語る、意識と無意識の間で作り上げた『All the places(I have ever slept)』

2025.2.19

井戸健人『All the places(I have ever slept)』

#PR #MUSIC

シンガーソングライターとしてのアイデンティティと、DJ / プロデューサーへの憧れ

―今回の曲作りの方法論、アルバムの方向性を決定づけた曲はありますか?

井戸:1曲目、2曲目、3曲目、6曲目を最初に作りました。まず簡単なデモを作って、それをゲストのプレイヤーに渡して自由に弾いてもらったんですけど、それを一回家に持ち帰って、曲を作り直してみたんです。ガラッと変わったのが1曲目の“¿”と、3曲目の“Living”で、このやり方は面白いなと思いました。特に“¿”はだいぶ変わりましたね。

―最初はどんな曲だったんですか?

井戸:最初は同じパターンのドラムが繰り返されるシンプルな曲だったんですけど、最終的には楽器が入れ替わったり、複雑な展開になったり、ガラッと変わりました。ドラムも演奏してもらった中から「ここを使いたい」っていうところだけ残して、それ以外は使わなかったり。

―“¿”はダブというか、音響的な側面の強い始まり方ですけど、音像のイメージは最初からあったのでしょうか?

井戸:最初はイメージはなかったです。どちらかというと、もうちょっとロックっぽい感じだったんですよ。ドラムから始まって、歌が入って、スタンダードな曲調だったんです。でもアウトロで弾いてもらったやつをイントロに持ってきたり、弾いてもらった素材をランダム性の高い機材やプラグインに通して、そこから好きなところを抜き取ったり、そうやってどんどん変わっていきました。

―そこにも無意識性が表れているわけですね。逆に言うと、“¿”の池田若菜さんのフルートのソロとかは、最初から「これを曲のメインに」みたいな意識があった?

井戸:いや、これは違う曲から取ってきてて(笑)。4曲目で吹いてもらったソロの使わなかったバージョンがあって、それもすごく良かったから、1曲目に使えるかなって。他の曲でも、Yatchiさんに8曲目で弾いてもらったフレーズを7曲目で使ってたりしました……いろいろやりすぎて、自分でももう忘れちゃった(笑)。

―曲の作り方に関して参考にしたアーティストや作品はありましたか?

井戸:カルロス・ニーニョが大きかったですね。『Extra Presence』に関する彼のインタビューを読んだら、とりあえず全部ライブ録音して、そのときに許可を得ておけば、自分の好きな部分を取り出して並べられて、許諾に関して「普通のサンプリングより楽だ」みたいなことを冗談で言ってて、なるほどなと思って(笑)。 

井戸:でもそれがいい感じになるのはすごいなと思って、DJの上手い人みたいな、「これがいい演奏なんだ」って判断ができる、その視点が自分にもあったらいいなと思ったんです。

―演奏自体は他の人がしていても、「これをいいと思う」という意識に自分が出ると。

井戸:そうです、そうです。「自分の良いと思うものを探る力」みたいなものを鍛えたい思いもあってやってました。なので、作り方という意味ではカルロス・ニーニョからの影響がとても大きいですね。

―ゲストプレイヤーの演奏を編集して曲にするという点においては、カルロス・ニーニョも参加していた岡田拓郎さんの『Betsu No Jikan』を連想したりもしました。

井戸:『Betsu No Jikan』も聴きました。素晴らしかったです。抽象的ではあるんですが、ポップスとしても気軽に聴ける…ああいい曲だな、と思える作品になっているのがすごいですね。岡田さんが演奏をどれくらい指定してるのかはわからないですけど、方法論だけを見ると、近いところはありそうです。

―作品にもよりますが、岡田さんの方がプロデューサー的な側面が強くて、井戸さんの方がシンガーソングライター的な側面が強いように感じます。

井戸:岡田さんと比べるのは恐れ多いけど、自分はやっぱりシンガーソングライター気質だなと思うことは多いですね。どちらかというと、コード進行やメロディーを作ってそれをどう歌うか、ということにフォーカスしてきたというか。ラフミックスが上がってきたときに、自分が気づかなかったところが調整されていて驚くことがあるのですが、いわゆるプロデューサーの方は音質とか音色に対する解像度が高くて、そこをちゃんと調整してるイメージがあって。今回のミックスは甲田徹さんにやってもらっていて、その作業の中でやはり自分が見れてない部分はあるな、と感じました。次作以降は、そういう視点も持って取り組みたいです。

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