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彼女たちに魔法のように寄り添う人ならざるもの

誰しも、どれだけ笑顔を絶やさずにいようとしても、悲しみや葛藤は湧き上がってくる。そこに魔法のように寄り添うのも本作である。
例えば第2話において、ひとみが思うようにいかなくなった自分の身体を嘆き「もう死にたい」と口にする時は、帰宅途中に七実が風船をキュッキュッと鳴らす様子を並行して描くことで、その心の有り様を示していた。それは、友人・環の第1話での言葉を借りれば「空虚な出来事を可視化する風船」である。その果てに「ちょうちょ」ができあがって喜ぶ七実の姿を見せて明るく帰結したと思いきや、完成したそれを見せに病院に戻った七実は、母の絶望を目の当たりにして、風船を手放してしまう。風船は彼女の手元から離れ、ふわふわと揺れながら転がり落ちる。そこには、七実とひとみ双方の失意が込められているように思えた。
さらに、七実が第3話において父が亡くなった時のことを思い出す時、彼女は水のない場所で、泳ぐ仕草をしている。まるで記憶の海の底に潜っているかのように。本作において、泳ぐイメージ、あるいは水は随所に登場する。第2話で「ニューヨークに行く!」と勢い余ってその場から飛ぼうとした七実の足は、次のショットで固い地面ではなく、水面の上にあった。その足は実際には七実の足ではなく、環の足だったのだが、次のショットで七実は、環とプールサイドで弁当を食べながら、ニューヨークで大道芸人になる夢を語っていた。それはまるで、猪突猛進で少し危なっかしい七実を、人ならざるものがふわりと包み込み、着地させているかのようだった。その「人ならざるもの」は、ドラマそのものとも言えるし、彼女には見えていない幽霊の父の仕業と捉えることもできるだろう。