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七実(河合優実)たちに寄り添う過去の物語

霊的な存在は、耕助に留まらない。彼女たちの過去の物語もまた、ある種の幽霊のように、ふとした拍子に現れ、彼女たちの現在に寄り添う。例えば、第3話において、祖母・芳子がちんすこうを食べる音に合わせて場面が変わり、一瞬だけ、若い頃の芳子(臼田あさ美)が何かを食べる姿が重ねられる時。あるいは、第4話において、大学生になり、次なる野望に夢中な七実が、以前は宅配業者の陶山が家のチャイムを鳴らすと玄関に飛んでいっていたのに、今はチャイムの音に気づきもしないことが、以前の彼女の姿を重ね合わせて対比的に示される時。同じく第4話で、母・ひとみが、心理カウンセラーという新たな夢を提示され、「夢」という言葉が呼び水となって、耕助の「夢ちゃう、そんなんすぐ叶えたる」という生前の言葉が重なる時。
「前のママが消えてしまう前に早くなんとかせな」「また昔みたいに戻れるようにがんばらな」と思う七実と違い、「そんなに昔はええもんか?」と第3話の冒頭でこちら側に問いかけ、「変わらんでええ。昔もええ、今もええ。一生懸命食べて、一生懸命生きてれば、それでええ」と締めくくる芳子。ほんの少し前も、少し前も、だいぶ前も、過去は皆、分断されることなく、その人の現在の中にちゃんとある。そして、ふとした瞬間に姿を現わすのだ。過去の自分や大切な人との思い出は、幽霊の耕助と同じように、失われることなくその人の内部に存在し続ける。