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岩井俊二が振り返る監督デビュー30年。仕事を選ばず、作品を「商品」と言える意識

2025.7.18

#MOVIE

誰かの記憶に断片的でも残ること、作品と出会うことが喜びにつながる

─映画デビュー作である『Love Letter』の4K版が4月に再上映され、若い世代からも人気を集めています。まさに、監督の目指す「普遍性」を体現していますよね。

岩井:音楽の話ですけど、最近『花とアリス殺人事件』(2015)のテーマ曲がインドのSNSでバズったんです。『fish in the pool』という。元々は学生の時に作った曲で。巡り巡って海外の動画で使われているのに遭遇すると、感慨深いものがあります。

岩井:映画はその時々で全集中して、自分たちなりの完璧を目指して作りますけど、ひとたび世に出たらどういう見られ方でもOKなんですよね。お客さん一人一人の記憶に残った何かが作品なんだと思います。それは僕が作ったものからかけ離れているかもしれない。そこが面白い。『Love Letter』は中山美穂さんが1人で2役を演じていますが、最後までそれに気づかずに同一人物だと思って見ていた人がいました。興味深かったですね。その人にとってはそれが『Love Letter』という作品な訳で。でもそれでいいんです。

─想像もしていなかった愛され方だとしても、映画と出会っていることが大事なのでしょうか?

岩井:たとえ予告編やポスターしか見ていなくても、それでもいいんです。誰かの記憶に少しでも残るっていうのはありがたいことです。その方の脳のちょっとの隙間を間借りすることになるわけですから。そもそも映画を全編をくまなく覚えている人なんていません。どうやったって脳内で簡略化されてしまいます。どういう形でお客さんの中に昇華されて、どんな形で残るのか。これからの時代、切り抜き動画とか、映像は断片化を余儀なくされると思います。いずれにせよ、僕からすれば、スマホで見て頂いても大丈夫ですし、お気に入り登録だけしている状況でも、出会って頂いてる状況がまずありがたいです。 そこから誰か他の作家に影響を与えて、その先はオマージュでもパクりでも、自分のアイディアがバトンリレーされて、新たな作品のピースにでもなれたら素晴らしい。自分の作品がどれだけ断片化されても誰かの記憶に残ってくれれば作家冥利に尽きます。

─その人の記憶に断片的でも残ることが、作品としての喜びにつながっていると。

岩井:僕自身も積読の書籍がたくさんありますし、いつ踏み込んで読めるのか喜びを持っているわけで、出会っていることに意味があると思います。たとえ、読まずに捨ててしまっても、いるか、いらないか考える時間を奪っている。同じように自分の作品・商品は、自分が想像している以上にいろんなところで迷惑をかけていると思うので、常に細かい出会いと別れに映画が「ある」ことがものすごく貴重だなと思います。

─「オマージュでも」という話がありましたが、NJZ(New Jeans)のMVはまさに岩井俊二監督作品のオマージュが溢れていますが、どのように見ていらっしゃいましたか?

岩井:ありがたいです。昔の作品が時代を経て、今もまだ覚えてもらっているのは奇跡中の奇跡ですし、どんな形であれ嬉しいですね。『Love Letter』が最近中国でリバイバル上映されたんですけど、新作に紛れて初日で3位を記録して驚きました。韓国でも、ある単館系の映画館が『リリイ・シュシュのすべて』を再上映してくれて、ロングランヒットになり1万人入ったそうです。世代が変わって、若い人たちに見てもらえる嬉しさはすごくあります。

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