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異色のリーガルドラマ『イグナイト -法の無法者-』が描いた平和をもぎ取るための正義

2025.6.27

#MOVIE

©TBS
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「ピース法律事務所」に込められた「peace」と「piece」

理不尽な事故に奪われた轟と娘・佳奈(藤崎ゆみあ)との平和な生活©TBS
理不尽な事故に奪われた轟と娘・佳奈(藤崎ゆみあ)との平和な生活©TBS

娘の命を奪った5年前のバス事故の真相を暴くため、さらには「訴えたくても訴えられない、刑事事件にもしてもらえない。そうやって、悪党の陰で怯えている人たち」を救うために轟が立ち上げた「ピース法律事務所」の「ピース」には、轟の言う通り「平和っていうのは、もぎ取るもんだから」という意味が込められているのだろう。さらには轟が、その日が誕生日だった娘・佳奈にプレゼントするはずだった鳥の形をしたテーブルライトもまた、理不尽に奪われた親子の「平和」を意味していた。

さらに、作品全体を通して考えると、「ピース」には「peace(平和)」だけでなく「piece(断片、かけら)」の意味も込めれているのではないだろうか。まずは、彼らが集うきっかけになったバス事故の全貌と、轟が宇崎たちを集めた本当の理由が明かされた第9話の「エピソード0」こそが、本作の全体像を把握するためのパズルの最後の1ピースであったということ。もしくは、こう捉えることもできる。「ピース法律事務所」に集う1人1人が、大切な「ピース」そのものだということ。

ピース法律事務所の「最後の1ピース」たる轟と宇崎の出会い©TBS
ピース法律事務所の「最後の1ピース」たる轟と宇崎の出会い©TBS

第8話で轟は「物事をどう見るかによって、未来は変わるってこと」なのだと、好物なのだろうドーナツになぞらえて言った。第1話で面接に来た宇崎が初めてピース法律事務所の扉を開けた時、轟は1つだけ足りないドーナツのことで、伊野尾と言い争っていた。1つだけ足りないドーナツは、「最後の1ピース」を連想させる。つまり、轟からすれば、「力だけじゃ守れないものがあると思ったんで」と知らず知らずのうちに轟の影響を受け弁護士になった主人公・宇崎の登場こそが、ピース法律事務所の、及びこの物語の「最後の1ピース」であり、すべての始まりだったのではないか。そして今、改めてその場面を見返すと、宇崎の弁護士を目指した理由である「力だけじゃ守れないものがある」という言葉にそれぞれに反応する伊野尾、高井戸、轟の表情からして、第1話時点で、彼らは既に「大切にしていることが同じ仲間」だったのだということがわかる。

宇崎の母・純子(藤田朋子)も新たな「家族・仲間」に©TBS
宇崎の母・純子(藤田朋子)も新たな「家族・仲間」に©TBS

第10話で、「大切なものが同じ人のこと」を「家族・仲間」と言うのであり、「正義」とは「大切な人を悲しませない」ことなのだと、宇崎の亡き父・裕生が幼い宇崎(松本瑛貴)に語りかける場面があった。その言葉は、そのままピース法律事務所のメンバーと彼らをサポートする桐石と浅見、そして宇崎の母・純子(藤田朋子)が、今や最高の仲間であり、家族であることに通じる。「大切な人を悲しませない」ように彼らは、仲間あるいは家族のために、そして自分のために、正義を貫こうとしてきた。

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