異色のリーガルドラマ『イグナイト -法の無法者-』が描いた平和をもぎ取るための正義

「イグナイト」＝“火をつける”が意味するもの

そして、何より本作最大の仕掛けは、前半と後半で見方がガラリと変わることだ。タイトルの「イグナイト（Ignite）」とは“火をつける”ことである。その言葉通りに第1話冒頭は、「火がつく」場面から始まった。女子高生・轟佳奈（藤崎ゆみあ）らを乗せた、宇崎裕生（宮川一朗太）が運転するバスが横転して爆発し、彼女ら彼らの平穏な日々は一瞬にして奪われた。その後、目を覚ました主人公・宇崎のショットが挟まれることで、それは彼が見ていた夢であったことがわかるが、そうした夢を見た原因であろう「5年前に起きたバス事故」の全貌は終盤になるまで明かされなかった。そして、その事故が、事故の加害者として全ての責任を背負わされた宇崎裕生を父に持つ宇崎と、犠牲になった佳奈を娘に持つ轟の心に「火をつける」きっかけとなり、宇崎と轟を数奇な縁で繋ぐきっかけとなっていたことも、後半になって徐々に明かされていった。