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リアクションや表情を細部まで味わえるキャスティング

自然な会話劇が魅力のバカリズム作品。ローテンションな会話でしっかり視聴者を惹きつけるためにも、キャスティングはとても重要だ。『ホットスポット』は、メインキャストの市川実日子と鈴木杏以外は、ほとんどバカリズム脚本ドラマの経験者だ。『ブラッシュアップライフ』からは、夏帆や木南晴夏、ココリコの田中直樹。2024年新春ドラマ『侵入者たちの晩餐』(日本テレビ系)からは、平岩紙と角田晃広、池松壮亮、菊地凛子。バカリズムの作劇にハマることが保証されている俳優が揃っている。
中でも、『ホットスポット』のユーモア部分を大きく担っているのは、平岩紙と角田晃広だろう。清美、美波、葉月の会話をさらに飛躍させるようなキラーワードを、淡々とした口調で放つ平岩の台詞回し、3人の会話に対して間をとったり、たまに被せたりと、絶妙なタイミングでツッコミを入れていく角田のコント師としての技術。2人がいなければ、セリフだけが上滑りするドラマになってもおかしくないと思うほど、この2人の存在感は絶大だ。

主人公である清美を演じる市川は、「実は俺、宇宙人なのね」と高橋さんから言われた時の、「この人、変なことを言い出した」とでも言うかのような表情など、どちらかというと受け身の演技をしていることが多い。清美が本音と建前を使い分けることが、また別のおかしみを生んでいる。
『ホットスポット』は、会話劇が面白いドラマとは言え、会話には表れてこない部分にも情報が詰め込まれている。そして、詰め込まれたリアクションや表情などの表現を細部まできちんと味わい尽くせるのは、最適なキャスティングが揃っているからと言えるだろう。