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いま香港映画が面白い。『ラスト・ダンス』『私たちの話し方』など最新の話題作を解説

2025.4.4

#MOVIE

「香港映画の危機」の中で生まれたユニークで多様な作品群

近年の香港映画は、必ずしも明るい状況にあるとは言えない。業界の不況が続くなか、中国と香港の関係が大きな緊張感をはらみ、2021年には香港政府が映画の検閲をより厳しくする条例を可決。映画人や評論家が語る「香港映画の危機」は、いまだ去ったわけではない。

そんな中、香港の歴史や文化に根ざした映画が多数製作され、人々に受け入れられていることが最近の大きな特徴だろう。大ヒットした『トワイライト・ウォリアーズ』や『ラスト・ダンス』だけでなく、『私たちの話し方』にも背景に聴覚障がい者の歴史がある。

一方で香港の都市を舞台に、より多様なテーマを語ろうとする作り手たちもいる。最後に特集企画「Special Focus on Hong Kong 2025」で上映された『All Shall Be Well(英題)』と『ラスト・ソング・フォー・ユー』をご紹介しよう。

『All Shall Be Well』は60代女性が同性のパートナーを突如失い、法律と「家族」の現実に直面するシリアスなストーリー。長年にわたり生活をともにし、パートナーから死後の望みを聞かされていた主人公だが、同性婚が認められていないために友人として扱われ、葬儀や住居の問題をめぐって遺族と対立する。

香港の都市や建築をリアルに、かつ美しくとらえた映像のなかで紡ぎ出されるのは、過酷な社会の偏見と現状だ。レイ・ヨン監督のストーリーテリングはストイックで無駄がなく、93分という短い映画ながら複雑なテーマを正面から見据えた。主演のパトラ・アウをはじめ、俳優陣の静かな演技合戦も見どころのひとつ。日本公開も決定している。

また、『ラスト・ソング・フォー・ユー』は香港の離島・長洲と日本の高知を股にかけたファンタジックなラブストーリー。かつて人気ミュージシャンだったセンワーは、今では新曲を書けず落ちぶれていた。ある日、センワーは高校時代に好きだったマンフィンと病院で再会する。ところが、マンフィンは重病を患っており……。

現代と高校時代を行き来しながら展開する恋物語で、昨今の恋愛映画にはあまり見られないピュアネスが魅力。センワー役を1990年代からのスターであるイーキン・チェンと、人気ボーイズグループ「MIRROR」のイアン・チャンが2人1役で演じた。ジル・リョン監督は『イップ・マン』シリーズなどアクション映画を数多く手がけてきた脚本家だが、自分の監督作品では恋愛ファンタジーに挑戦したかったそう。「愛や希望の力で世界は変えられると信じたい」と力強く語ってくれた。

『トワイライト・ウォリアーズ』をきっかけに、日本国内でも香港映画の注目度がにわかに高まっている今。カンフーやアクションにとどまらない、意欲的でユニークな創作の数々にぜひ触れてみてほしい。

なお、『第21回大阪アジアン映画祭』は2025年8月29日(金)~9月7日(日)に開催予定。再び充実のラインナップが届けられることに期待しよう。

『第20回大阪アジアン映画祭 OSAKA ASIAN FILM FESTIVAL 2025』

実施期間:2025年3月14日(金)〜23日(日)
主催:大阪映像文化振興事業実行委員会
会場:ABCホール、テアトル梅田、T・ジョイ梅田、大阪中之島美術館 1Fホール
https://oaff.jp/

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