メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

大根仁に聞く、坂本慎太郎ライブの裏側「100年先にも文化遺産として残したかった」

2025.5.14

#MOVIE

100年後にも残したい。文化遺産としての坂本慎太郎ライブ

─2023年には、ニュー白馬の映像がLIQUIDROOMで限定上映されてます(2023年5月17日 / 2回上映)。しかも3つのスクリーンを並べての3画面構成で!

大根:撮り終わって、この作品の出口をどうしようかずっと考えていたんですよ。とりあえずフィルムを何カットか現像してみたら、やっぱりすごく良かった。それを坂本さんに見せたら、なかなかいい反応で「フィルムの俺はイケてる」と思われたんじゃないかと邪推しています(笑)。

それで、ゆらゆらの野音の映像は『爆音映画祭』というイベントの定番メニューになってるし、ニュー白馬の映像をLIQUIDROOMみたいなライブハウスにお客さんを入れてスタンディングで見るような上映会をやりたいなと思って、坂本さんに提案したんです。最初はスクリーン1面だけの想定だったんですけど、編集していたらフィルム素材がめちゃくちゃいい。1面に収めるのはもったいないと思い、3面でやったら面白いんじゃないかというアイデアが浮かびました。

─そのためのスクリーンも新たに作られたんですよね。

大根:LIQUIDROOMのステージに両側を「ハ」の字にしてスクリーンを3つ置きたいと相談して自費で作りました。

─そもそも白馬の本編撮影がすでに相当な経費だったのに、さらにお金のかかる方向へ(笑)。

大根:どうかしてますよね(笑)。でも、何よりも自分が見たかったんです。初回の上映では、ライブの音も映像に張り付いているものではなく、実際に坂本さんのライブを担当されているPAの佐々木(幸生)さんに上映と同時にその場でミックスしてもらって、ライブさながらの音量で3面の映像を見る試みになりました。ただ、1回目の上映では若干のトラブルもありましたが。

─映像に不調があって、途中で止まったんですよね。でもそのとき、大根さんがマイクを持って謝罪と改善に向けたアナウンスして、映像が再開したときは、お客さんがめちゃくちゃ盛り上がりました。本当にライブでアクシデントがあって、そこからの奇跡的復活があったときみたいでした。

大根:そうでしたね。

─2024年4月13日のLIQUIDROOMでの再上映の際は、山口保幸さんが撮影された人見記念講堂でのライブ(2022年10月26日)とのオールナイト二本立てでしたが、奇しくもその数日前に亀川千代(ex. ゆらゆら帝国)の訃報が届いたこともあり、最後の最後に、また大根さんがマイクを取り、アンコールとしてゆらゆら帝国の野音ライブが上映されました。あれもすごいつながりというか、縁というか。

大根:明け方でしたね。”いまだに魔法が解けぬまま”と”無い!!”の2曲だけ流しました。

─あの構成ができたのも、大根さんだからですよ。誰か別の人では成立していません。

大根:そうかもしれないですね。あのときは前々日くらいに坂本さんに連絡して、最後に2曲だけ流したいとお願いしました。亀川さんのいいショットがめちゃくちゃ撮れていた2曲でしたし。あの日、明け方まで残って見ているなんて、絶対にゆらゆらも坂本さんも大好きな人たちじゃないですか。だからみんなでR.I.Pできたような、そんな気がしました。

─そして、あの上映会から約1年を経て、Netflixでの公開となりました。

大根:ちょうど僕が監督した『地面師たち』がNetflixで配信されて、専属契約のお話をいただきました。「次はどうしましょうか」と話している中で、「実はこういう作品を持っていまして、どうでしょうか?」とニュー白馬のライブ映像を提案したわけです。Netflix内にも坂本さんのファンがいらして「ぜひ配信したい」と言っていただきました。

─結果的に、2020年にニュー白馬の存在を知ってから5年がかりでここまで話が転がってきたというのは、こちらとしても感無量です。

大根:思い返せば松永さんの一言から始まったわけですし、松永さんの夢を叶えたというか、手のひらで転がされてきたような気もしますが(笑)。でもとにかくあのライブは一夜限りの奇跡だったし、それを残せたのはディレクター冥利に尽きます。「よくぞ決意した! 俺」と褒めてあげたいですね。例えば『T.A.M.I. Show』(1964年に行なわれたカリフォルニアでのコンサート)とか、よくぞあのイケイケのジェームス・ブラウンやローリング・ストーンズを撮っておいてくれたなと、後世の僕らが思うような映像ってあるじゃないですか。文化遺産というか、個人としてのメセナというか、100年後の人にもちゃんと見られたい、残しておきたいという気持ちで作りました。

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS