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大根仁に聞く、坂本慎太郎ライブの裏側「100年先にも文化遺産として残したかった」

2025.5.14

#MOVIE

大根仁の視点から見た、ゆらゆら帝国と坂本ソロの違い・共通点

─振り返ると、大根さんはゆらゆら帝国の最後の日比谷野外音楽堂のライブ(2009年4月26日)を撮影して、作品『ゆらゆら帝国 2009.04.26 LIVE @日比谷野外大音楽堂』として残されていますよね。

大根:ゆらゆら帝国を知ったのはバンドがメジャーデビューをしてからですけど、やっぱり『ゆらゆら帝国のしびれ』『ゆらゆら帝国のめまい』(共に2003年)が出たあたりで、「あれ? これなんかとんでもなくヤバいことになっているんじゃないか!」と本格的に感じ、ライブも都内近郊のライブはほとんど見てました。最後の野音を記録できたのは、ファンとしても映像ディレクターとしても、趣味と仕事が合致した瞬間でしたね。後期のゆらゆらは、自分が聴いて見てきた邦楽ロックの究極の形だと思ってました。

ゆらゆら帝国『ゆらゆら帝国のしびれ』をSpotifyで聞く
ゆらゆら帝国『ゆらゆら帝国のめまい』をSpotifyで聞く

─あの野音ライブと今回のニュー白馬の撮影で、つながりを感じた部分もあったと思いますが。

大根:僕の中では2本の作品は完全につながってます。野音ライブは自主制作ではなかったですけど、あのときも予算はあんまりなかったですね(笑)。あれを撮ることになったのはライブの2、3カ月前に下北沢で飲んでたら、当時のゆらゆら帝国のA&Rだった薮下(晃正)さんと会って、映像を撮るんだけどディレクターが決まってないというので、「俺が適任です!」って手を挙げて、その場で決まったんです(笑)。ただ、その時点ではスペシャ(SPACE SHOWER TV)でダイジェストを1時間番組で流すという話でした。

─そうか。このときもそもそもリリース前提ではなかったんですね。

大根:でも結局、その翌年にゆらゆら帝国が解散してしまったわけです。あの野音のライブ映像はデジタルカメラで撮影したんですけど、照明も暗かったから無理矢理カメラの露出をあげて撮っていたんです。その結果、映像全体にざらつきが出て、デジタルなんだけど昔のフィルム映像みたいに見えたんですよ。

ライブをフルで撮った映像は僕がやった野音しかなかったし、たぶん坂本さんがそれを見て、この映像だったら残していいとおっしゃってくれたのかな? 坂本さんがライブ映像に興味がないのは、自分たちのライブに今のデジタルの明るくて生々しい質感が合ってないと思ってるからじゃないかなとも思うんですよね。

『坂本慎太郎LIVE2022@キャバレーニュー白馬』場面写真

─その感覚、よくわかります。

大根:僕は本業としては映画やドラマを撮ってきたし、どの作品にも愛着はありますけど、マイベストはどれかと聞かれたら『ゆらゆら帝国 2009.04.26 LIVE @日比谷野外大音楽堂』を挙げていました。僕の中では完璧な作品なんです。特に”無い!!”の撮影や編集は2度とできない究極の形と思ってます。あれを越えることはできないんだろうなとずっと思ってたんですけど、でも今回のニュー白馬のライブ映像で、越えたというか並んだというか。またベストワークが更新されたと思ってますね。

─ちなみに大根さんから見た、ゆらゆら帝国と坂本慎太郎ソロとのライブの違いはどんなところでしょう?

大根:全然、別物だとは思ってますね。ネガティブな意味ではなくですけど、ソロになってから単純に音量が小さくなったという面もあります。後期のゆらゆら帝国のライブって、ステージと客席の間に独特の緊張感があったんですよ。盛り上がりはするんですけど、お客さんも「うぇーい」みたいではない、ピリピリした感じ。特に『空洞です』(2007年)以降のライブは、「次はどうするんだ? 何が出るんだ? どんなアレンジにするんだ? 一瞬も見逃さないぞ!」と、客席自体が身構えていたような印象があります。それは僕もそうでしたけど(笑)。

ゆらゆら帝国『空洞です』をSpotifyで聞く

大根:ソロになってからのライブは、そういう意味でステージと客席の間の抜けがいい気がします。いつだったかソロになってからの坂本さんのインタビューで、ライブ中に後ろのほうでしゃべったりしてもらっても構わないし、ハコバン的な感じでやりたいと話しているのを読んだ記憶があります。あと、年齢に応じてちゃんと大人のロックになっていると思います。

―共通しているなという部分はありますか?

大根:ゆらゆら帝国の後期も究極のロックバンドだと思いましたけど、ソロはソロで世界中見渡してもこんなバンドは見たことがない感じになってますよね。同時代に坂本慎太郎バンドが見れるなんて、こんなに幸せなことはないなと感じてます。

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