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『ドラクエ』から出て描いた、自分自身の物語
あの夜、終始緊張していた僕に、小島監督は最後まで優しく接してくれた。話していた時間は、おそらく10分にも満たなかったのかもしれない。堀井雄二氏と一緒に『ドラクエ』という巨大な作品に貢献していることをしっかりと讃えてくれたうえで、小島監督は、最後にこう言った。
「藤澤さんが『ドラクエ』でいい仕事をしていることは、すごいことだと思います。だけどね、藤澤さんもひとりのクリエイターなら、いつかは自分の作品を作らなきゃ。そうじゃなかったら、もったいないですよ」と。少し関西訛りの入った、優しくて深い口調で。
この言葉の本当の意味がわかるようになるまでに、僕はずいぶん時間がかかった。『ドラゴンクエスト』の開発という巨大ユニバースの中で仕事をすることに、当時の僕は全力を注いでいたし、その場所こそが世界のすべてだと本気で思い込んでいた。そんな僕にとって、「そこから出ることが必要だ」と伝えてくれたのは、この世でただひとり、小島監督だけだった。
そして今、あれから16年が過ぎ、僕は「第四境界」という場所で、自分自身の物語を描くようになった。あのときの小島監督の言葉に導かれるように、気がつけば、ここにたどり着いていた。

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『ゲームデザイナー 小島秀夫論』

著者:ハーツハイム・ブライアン・ヒカリ
訳:武藤陽生
発売年月:2025年5月
価格:2,500円(税別)
発行:DU BOOKS
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