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小島秀夫の功績。日本を代表するゲームデザイナーの革新性を第四境界の藤澤仁が綴る

2025.8.1

#OTHER

ゲームデザイナー・小島秀夫は、1987年の『メタルギア』から2025年時点での最新作『デス・ストランディング』まで、多様で革新的な数々の作品を世に送り出してきた。その影響は、ゲーム業界はもちろんのこと、広くメディア、映像、芸術分野にまで及ぶ。ゲームクリエイターで「第四境界」の総監督である藤澤仁も、そんな小島から大きな影響を受けた一人だ。藤澤が、自身の思い出と想いを交えながら、小島の革新性と功績について綴る。

※本稿は、小島秀夫の歩みと全作品を詳述した書籍『ゲームデザイナー 小島秀夫論』(DU BOOKS)に掲載された「解説 破壊ではなく設計のためのメタ表現 ──小島秀夫監督へ(藤澤仁)」の一部を抜粋して掲載したものです。

『メタルギア』の小島秀夫と『ドラゴンクエスト』の藤澤仁の出会い

2009年、小島秀夫監督がゲーム・デベロッパーズ・チョイス・アワードの生涯功労賞を受賞され、日本のクリエイターたちでそれをお祝いするパーティーが催された。

メディアの方のご厚意で、まだ駆け出しだった僕も、その席に加えていただいた。その日、初めてお会いした小島監督は、当時の僕にとってはただひたすら仰ぎ見るばかりの存在で、緊張のあまり、まともな挨拶すらできなかった。

パーティーは、著名なクリエイターたちが勢揃いし、賑やかな雰囲気に包まれていた。当時はまだ『ドラゴンクエストIX』が世に出たばかりで、そういう場に慣れていなかった僕は、恐らく完全に浮いていたのだろうと思う。ようやく話しかけてくれた人は、なぜか痛烈な皮肉を僕に浴びせて去っていった。時間が経つほど、その場にいるのがいたたまれない気持ちになったことをよく覚えている。

そんなとき、ふとメインテーブルに目をやると、小島監督と視線が合った。驚いた僕に、監督は笑顔で手招きをしてくれた。慌てて駆け寄ると、恐縮しきっていた僕の様子を見て、隣の席を引き、座るように促してくれた。そして、少し関西訛りのある柔らかな口調で、こう言ってくれた。

「藤澤さんのこと、聞いてますよ。『ドラクエ』で、いい仕事をされた方だって」

たぶん、反対側の隣にいたメディアの方が、僕のことを紹介してくださったのだろう。僕はその言葉にすっかり舞い上がってしまって、それに対して何と答えたのか、それから何を話したのかも、ほとんど覚えていない。

ただ、この短いやりとりの最後に小島監督がかけてくれた言葉だけは、あれから16年が過ぎた今でも、忘れがたく心に焼きついている。

藤澤仁(ふじさわ じん)
1997年より『ドラゴンクエスト』シリーズのシナリオ制作に参加。以降17年間、多くの関連タイトルに関わり、ナンバリングタイトルとなる『Ⅷ』から『Ⅹ』では堀井雄二氏の右腕としてシリーズディレクターを務めた。2018年に株式会社ストーリーノートを設立。多くのゲーム、漫画、映像作品の物語を担当する。2019年、小説『夏の呼吸』上梓。2020年にARG作品『Project:;COLD』の総監督を務めたことがきっかけとなり、2024年にARGブランド『第四境界』を立ち上げ。『人の財布』や『人の給与明細』をはじめとした『人の~シリーズ』、『かがみの特殊少年更生施設』など「誰も見たことがない物語表現」の追求を続けている。

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