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さよなら名機「Heritage 3000」 PAエンジニアの巨匠たちが語るライブ音響の世界

2024.12.26

#MUSIC

3人にとってのアナログ卓の魅力

ー話を戻すと、「ダブのPA」って、PAの基礎的な技術や知識があったうえで、さらに音楽的なセンスも求められるようなイメージがあります。バンドの演奏にリアルタイムでエフェクトをかけて音響的な効果をもたらす役割ですから。

佐々木:だから、そもそもダブって、アナログコンソールがなければあり得ない手法。アナログ卓は、つまみやフェーダーを動かせば、そのぶん自分が思った通りに音が変わる。エフェクターも手が届くところに実機があって、それらを使って音で遊ぶような手法です。ただデジタル卓だと、ボタンを押して1つのことを選んだら、そのときはそれしかできないことが多い。だからデジタル卓でダブをしようとすると、曲中にあらかじめ用意しておいたエフェクトをかけるようなことになる。僕はその時点でダブとは言わないと思う。その場でしかできない、思い付かないことをやるのがダブだと思っているから。

ー時代の流れに沿ってアナログ卓を常設するライブハウスが少なくなっていて、現在ではデジタル卓が主役です。入出力の数やスピーカーとの連携、メンテナンス時の利便性など、たくさんの理由があってこそですが。

佐々木:うん。だからWWWでPAするときは、ちょっと楽しみだったんですよ。WWWのHeritage 3000はアナログ卓だから。

内田:僕、今はダブをやる必要があるときは、ライブハウスに自分の16chのアナログミキサーを持ち込んでます。デジタル卓だけだと、1度に2、3つくらいしかエフェクターが使えないから。エフェクトをかけたいパートを自分のアナログ卓に立ち上げて、エフェクトを8chくらい戻す。現場に持ち込む機材は多くなりましたけど、だいぶ定番化してきちゃいました。

内田直之 / 『”Heritage 3000″ Farewell series』では、1月10日(金)に内田が全アクトをオペレートする『FLATTOP feat. 内田直之』が開催される。

DMX:この前、吉祥寺Star Pine’s CafeにPAで行ったらさ、SOUNDCRAFTのアナログ卓だったんだよ。MH4。店に入って見た瞬間、「こんなにつまみあったっけ?」って思った。あちこちいじってると、指が痛い(笑)。それに操作中にどこのつまみを上げたか忘れちゃったりして、「なんかリバーブ多いな?」みたいな。そんな感じだよね、アナログ卓でPAするって。アクシデントも含めて面白い。

内田:それに、やっぱり使いやすいですよ。僕がPA卓に求めるものは、使い勝手と分かりやすさです。目的のことを簡単にできるのが一番ありがたい。

佐々木:それが一番だよ。あとは音質。とは言っても、最低限の音質であればいいんだけど。卓自体にそんなに種類はないし。プロが使うPA卓のメーカーって、ざっくり言ってしまえば、アナログ卓だとSOUNDCRAFT、MIDAS、YAMAHAくらい。各社それぞれ特徴があって、自分に一番しっくりくるやつはどれなんだっていう話。

DMX:メーカーによって音質が違うから音質論争もあるけど、俺はそこはあんまり気にしたことがないんだよね。

佐々木:うん、僕もそんなに。

DMX:それよりも、使いやすさと軽さが大事。ホールツアーなどを回ると、軽さが正義だと思っちゃう。ホールに卓を設置するとき、「中通路までしか運べない」「中通路までも運べない」とかあるから。そうすると、ステージの前から客席の後方まで、えっちらおっちら担いで行くわけじゃない。もう地獄だよ。だから俺は軽さだな。なんならフェーダー16本でも頑張りますよって。軽ければね。

Dub Master X /『”Heritage 3000″ Farewell series』では、1月13日(月・祝)の柴田聡子の公演を担当する。

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